第6話 秘かに咲いた花
エミール・シェーグレン作曲
「ヴァイオリンソナタ第1番」さんからのお手紙
『やましんさんが、どうしても出ろ出ろとおっしゃいまして・・・。私は、あまり人前にはでたくありません。
あがってしまうからです。私は、あまりに繊細で、多くの方にお目にかかるのは苦手ですから。
ましてや、自分をアピールするなどは、考えたこともありません。なので入社試験とかを受けることなど考えにも及びません。
今の世の中は、積極的に出てゆかないと何にもならない、と、やましんさんはおっしゃいます。
そういうご本人が、世の中からしっかり隠遁しているのにですよ!
でも、まあそれほどまでにおっしゃっていただけるのであれば・・・
私は五人の兄弟姉妹でございます。
その中の「第1番」とは言われておりますが、実は一番おとなしくて、引っ込み思案なのです。
弟の「第2番」とは、割とよく似ているところもあるのですが、弟の方が楽章が一つ多いし、それだけ出たがりです。第2楽章の中間部と第三楽章は、私の第二楽章と性格が似ていますけれどね。
でも、わたくしの方が、多少近づきやすいかもしれません。
それは旋律のわかり易さ、なのかな、と思います。
私自身は、あまり人様の前でお話したり、が得意ではないのですが、でも意外と聞いてくださる方にとっては、実はとっても親しみやすいと思います。
なので、もし、皆さまが聞いてくださるのであれば、こんなにうれしい事はございません。本当を言いますと、もっともっと、聞いてほしいのです。でも、「聞いてほしい!」なんて大きな声で申し上げる性格ではありません。
もっと、おしとやかですもの。
私を作ってくださったシェーグレンさんも、生い立ちは全く豊かではなく、苦学したようですし、40歳を超してからオルガニストとしてようやく人気も出たようですが、作曲家としては、けっして派手な方では無かったようです。有名どころは、オルガンのための「伝説」という作品でしょう。また結構大きなピアノ曲や、沢山の歌曲があります。その中でも、わたくしども五兄妹は、自分で申し上げるのもなんですが、傑作なのです。
せっかく、こうして出てまいりましたので、どうぞお見知りおきくださいませ。
音楽でお会いいたしましょう。 さようなら
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(参考)
シェーグレンのバイオリン・ソナタには、かつて、LPの全集が出ていました。筆者もそちらの演奏が大好きでした。CDにもなています。今、少し事情があって手元にとり出せないので、ここでは、すぐ手元にあるCDをあげておきます。オルガン曲などもCDになっています。なおスウェーデンの音楽には立派な本があります。「歌の国スウェーデン」という本です。(戸羽晟氏著 新評論2008年)
エミール・シェーグレン作曲
「ヴァイオリンとピアノのためのソナタ第2番」作品24
「 同 第1番」作品19
そのほか
ヴァイオリン:Per Enoksson
ピアノ :Kathryn Stott
スウェーデン(BISーCD-995)
筆者には、ちょっと未来派的な斬新な演奏。何度か聞いている と、なかなかよい演奏です。
(追記)
エミール・シェーグレン作曲ヴァイオリンとピアノの為の作品全集
ヴァイオリン:トビアス・リングボルイ
ピアノ :アンデルス・キルストレム
スウェーデンCAPRICE (CAP21500)(CAP21667)(CAP21714)
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