第4話   傑作です!

尾高 尚忠(1911~1951)作曲 

         「フルート協奏曲」 さまからのお手紙


 日本の皆様、お元気ですか。

 ぼくは尾高尚忠さんの「フルート協奏曲」です。

 最初にお断りいたしますが、ぼくは「レア」ではありません。

 日本人の手になる、最高の「フルート協奏曲」として、1948年に作曲され、最高の演奏者によって初演され、 また同様に改訂後の初演が行われました。

(尾高さまは、少しだけ改訂版未完のまま、亡くなったのですが。)

 その後も、素晴らしいフルーティストたちにより、たびたび演奏されて今日に至っております。

 「やましん」さんという、素性の怪しい方が、なぜここに取り上げようとしたのかを、好意的に推察すると、こうです。


 ぼくに限らず、フルート関係の音楽の多くは、

例えばモーツアルトの二曲の「フルート協奏曲」さんと、一曲の「フルートとハープのための協奏曲」さん、グルックの「精霊のおどり」さん、ドップラーの「ハンガリア田園幻想曲」さん、など一部の例外を除くと、フルーティストと、フルート愛好家以外には、今もけっして一般的に聞かれるクラシック音楽ではないのではないか?

 ならば「レア」であろうから、ここでたとえ非力ではあっても、世間様に、少しでも宣伝してよいのではないか? と。

 ううん、自分で言っていても、少々寂しいような気はしてきたな・・・。

 ピアノであれば、ベートヴェンの「熱情ソナタ」さんとか「月光のソナタ」さんとか「悲愴ソナタ」さんとか、「ピアノ協奏曲五兄弟」さんとか、シューベルトの「楽興の時第三番」さんとか、ショパンの「幻想即興曲」さんとか、「ピアノソナタ第二番」や「第三番」さんも、「ピアノ協奏曲」さんも二曲いるしな、シューマンの「子供の情景」の「トロイメライ」さんとか、「ピアノ協奏曲」さんとか、「ソナタ」さん三曲も有名だし、ドビュッシーの「亜麻色の髪の乙女」さんとか「月の光」さんとか、うわー、もういっぱい、いくらでも出るわ出るわ!

 

   おほん

 

 いや、しかし、実際に、僕は傑作です。日本における傑作というより、もっと普遍的な、そう、全地球的な価値があると思います。

 まあ、聞いてみてください。


 オーケストラの一発、「どかん」から始まって、ソロフルートが、まるで天から舞い降り、また再び天に駆け上がってゆくような第一の主題を演奏します。

 とっても演奏の難しいパッセージの後、こんどはもう、日本人の心をぎゅーっと握りしめてしまうような、でも、もっともっと広い想いの第二の主題。

 そのあと、ふたたびフルート吹きの力量をしっかりお見せできる(つまり、とにかく難しい、だって、息継ぎできない・・・)ような展開部の後、りっぱな再現部を形作っている・・・。


 第二楽章は、本当に感動的です。

 ちょっとエスニックな主題、そうしてまた、日本の田園地帯を夢見るような主題。それがいつの間にかソロフルートと一緒になって、ちょっと信じがたいような素晴らしい世界を描き、最後はあえなく消えてゆきます。


 第三楽章は、日本的というよりも、まさに国際的な音楽です。

 日本的にも聞こえますが、アジア的でもあり、また西洋的でもあり、そうした、ある種の「格付け」というか、「価値観の限定化」というか、そうしたことを軽々と超えてしまった素晴らしい音楽です。

 と、自画自賛みたいになりましたが、ぜひ、みなさん聞いてみてください。

 

  最後に、健康には、いつもご注意ください。

                さようなら、音楽で会いましょう!



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(参考)

  内外の名演奏家による録音があり、それぞれCD化もされています。 でも、書くなら、全部書かないとなんだか罰が当たりそうなので、ここ では愛聴のLPレコード一枚だけあげます。名演奏です。中古屋さんでも 時々見かけます。


 フルート:吉田 雅夫

 指揮  :岩城 宏之 

 管弦楽 :NHK交響楽団

       LPレコード(SKR1012)

       再発盤も、見かけたような気がしますが・・・






 











 


 

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