1-2 新しい生き方
俺はこの国と呼べるのかどうかわからない掃き溜めの地で生まれた。そして、他の奴等と同じように孤児だった。
この地では魔力が主役だ。ここの奴等は魔力の為だけで生きてる。そのため、自分が腹を痛めて産んだガキだって魔力の搾取の対象だ。まぁ、殆どのガキは生まれる前に流産されるけどな…この腹の中にいるガキは厄介で、母親の魔力を奪おうとしやがる。まぁ、殆どは魔力が全くないまま産み出される。
俺はそのようなガキと同じように生まれ、棄てられた。育てるにしても、面倒だからな…まぁ、人肉スープの具材にならなかっただけで運がいい。俺はその後必死に呼吸して、空気中の障気に含まれる微量の魔力を受け取り、一人で自立出来るようになったら土を食べ、草を食べ、根を食べ、木の皮を食べ、虫を食べて生きていった。
ここで生き延びれたのも運がいい。俺は生まれ、人肉スープの具材から逃れ、食べることを知っていた。そして、更に運が良かった。俺は孤児のグループに拾われたのだ。俺はそこで話せるだけの言葉を覚え、盗みという生きる術を覚えた。
この世界で盗みは命懸けだ。見つかったらそれだけで殺される。そして、とうとう俺らのアジトが見つかりかけた時、俺は前まで仲間…仲間の面をしたガキどもを殺した。奴等の魔力は全て俺の物だ。
俺は逃げた…街から離れた森の中へ…俺はリーダーが持っていたナイフを片手に森の獣どもを狩り、肉を食べ、血をすすり、必死に体の肉と魔力を増やした。
こんな運が良かったと思われた俺もとうとう運が尽きたらしい…獅子頭の魔獣に見つかったのだ。普段は気配を消し、体に泥を塗りつけたりなどしてるのだが、何故か見つかったのだ。
俺は必死に逃げた。走って走って、体がデカイ奴がくぐれなさそう木の間に入ったり、木に登ったりした。
奴は諦めない…障害物をその巨体で壊す。
奴は体のバネを使い飛びかかり、俺の左腕に食いつく…俺は体を捻り、食われた腕を引きちぎる
ブチブチと嫌な音が響き、激痛が走るが、俺ははを食い縛り逃げるが…急に左腕を無くしたことによりバランスが崩れ、倒れる
。
奴は獣だが、人間のようなマヌケではない、確実に俺の息の根を止めようと腕を振る。
俺は必死に避けようとするが、体を言うことをきかない。だが、まだまだ俺は死ねないらしい。奴の爪は俺の左目を潰しただけだ。
「ハハハ…俺はまだまだ運がいい…まだ死なないみたいだな」
俺は残った右手で地面を掴み、奴の目元へ土を投げつける。
「所詮は獣だ…マヌケはやっぱりマヌケだ」
獣は目元の土を払おうと手で目元を擦る。
俺はその好きに、持っていたナイフで奴の首を刺し、ありったけ魔力を注ぎこむ。
「吹き飛べや!クソッタレ!」
獣の首が吹き飛ぶ…俺の魔力は特殊らしい…敵の体に自分の魔力を注入したらその魔力を意のままに操れる。例えばこんな感じに内部破壊をおこすことが出来る。
先程まで注入した魔力と比べ物にならないほど、多量の魔力が体に流れ込む。
「ハハハ、クソッタレが!さて、俺の運はここまでか…ちくしょう…まだまだ足りねーよ。魔力が…」
俺の瞼はどんどん重くなる。体から多くの血が抜けたのか、寒い…
「なかなか楽しい見せ物だったよ!私と同じ左腕を失った少年よ。敵の体内に自信の魔力を注ぎ内部破壊をおこす。まだまだ無駄が多く荒削りだが、十分すぎる程の才能だ。君こそが私が求めていた特異…その肉体、その精神、その魔力…私の下で学ぶのなら、生かせてあげようじゃないか!君はどっちを選ぶ?死んで自由になるか、生きて奴隷になるか…」
俺は声の主を見つめる。
その者は左腕を失っていた…褐色の肌をした人間…いや、人外の存在だ。
「私はジョゼフィン、褐色の肌を持った異端のフェイエルフだよ。そして、君の人生を握る者だ」
彼女は俺に向かって手を伸ばす。
「ハハハ…ちくしょう、クソッタレ…俺はまだまだ死なねーよ」
俺はその手を握る…その手はとっても温かかった。
全身に魔力の渦が巻く。それらは俺の左腕の付け根と無くした左目に入り込み…
「それは、君が失った血を増やすだろう…それは君が傷ついた傷を癒すだろう。それでも失った物は…左腕と左目は取り返せない」
俺はその日、三賢人の一人、南方のジョゼフィンの弟子になった。
彼女はあらゆる物を俺に与えた。彼女はあらゆる欲を満たしてくれた。
多くの食い物を用意し、俺の食欲を満たしてくれた。多くの血を用意し、俺の渇欲を満たしてくれた。多くの戦い方を教え、俺の戦闘欲を満たしてくれた。多くの魔物を用意し、俺の破壊欲を満たしてくれた。多くの書物を与え、俺の知識欲を満たしてくれた。
そして…愛を知らない俺に多くの愛を与えてくれた。
欲にまみれ、更に知らなかった欲に目覚め、そしてすべての欲を満たしたはずなのに…まだ足りない…
俺は
俺は師匠を押し倒した…服を剥ぎ取り、のしかかった…師匠は一瞬驚いたが、笑って俺を受け入れてくれた。
俺は全てを手にいれたはずだ…何故満たされない…まだ知らない欲があるのか…
それとも…
本当は満たされてないのではないのか…
ああ、俺はこんなにも欲深いのか…俺は欲を欲し、欲に溺れ、欲に飲み込まれてしまう…
ああ、足りないなぁ…
そうして、師匠が住む家に到着した。
俺は愛しの師匠が待つ家の扉に手をかける
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