どうせ美辞麗句




「‥また喧嘩したの?怪我して‥、こっちいらっしゃい」


心配している、優しい顔、悲しい顔、

ちゃんと見なよ、あんたの方が怪我してる。


麻「‥‥‥‥いい。」


どうして。


「よくないわ、血がでてるじゃない‥」


どうしてか。


麻「いいっていってんだろ!」


どうしてさ。俺よ。






ガシャン



「っ!‥‥‥‥帰ってきた。」 パリン


ああ、また。 ガタン


「麻輝、どこか、‥‥、今井くんの家に泊まらせてもらいなさい、今日は」 ゴトン


麻「‥‥‥‥どうしてだよ、‥‥あんなの俺が殴って‥」


「やめなさい」


「‥‥‥‥っ」


大丈夫、そんな度胸ないんだ。


「いいから、はやく、‥‥‥‥お願い」


まただよ。


麻「‥‥‥‥‥‥ちっ」


家から出る、

あの部屋が全てだった俺はもういない。

あんな部屋もう出れる。


皿の割れる音がする、

テーブルが倒れる音、痛々しい肌の音。


寒い。


寒い、怖いんだ、生まれた時からああだから。


いつかは殴ってやろうと、

体だって、あっちよりでかいんだ。

だけど。

似ているから。


あれは俺だ。

愛情表現が苦手で、

不器用で、

繊細で、

もし、辛くてどうにも出来なくなった

あいつは、

俺にもし殴られたら

壊れてしまうかもしれない、

いや、母が壊れてしまうかもしれない、

全部壊れてしまうかもしれない。

もし、辛くてどうにも出来なくなった

俺が、誰かに

殴られたら、壊れてしまう。

自分勝手だ、我儘だ、

怖いんだよ。


寒いよ。痛いんだよ。



トントン

ドアを叩く。


今井「‥‥‥‥さっみ、‥‥なにやってんだお前」

星野「今日、泊めてくれよ」

今井「‥‥‥‥はいれ、天石達もいんだ、遊んでような」

星野「‥‥ありがとう」

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