第7話少しずつ・・・

 ピンク色のリュックのミコトを抱き締めて彼女が言った。(ありがとう)と。

 彼女の大切な家族であるミコトの主治医となってちぎれかけていた耳を手術した。小さい頃から両親共に仕事人間で子供に対してかなりの放任主義だった。おかげでお腹が空けばある程度の食事は用意できるし、ゼッケンや雑巾などの簡単な縫物も得意と言っていいレベルになってしまったのだ。こんな事が役に立つ日が来るなんて…ラッキーだ!と思ってしまった。


「またミコトの調子が悪くなったら言っておいでよ。連絡先渡しておくから」


 僕は一応持って来ていた学校指定のカバンから適当なノートを引っ張り出してケータイの番号を書いた。その下に(主治医直通)と付け加えて。彼女は嬉しそうでも困った感じでもなく、ただ破り取ったそのノートの切れ端を一旦読んでからきちんと畳んでミコトにしまった。

 ミコトの手術が終わってしまうと急に心細くなってきた。だって僕たちにはミコトの手術と言う名目以外に何の接点も無い他人だったからだ。お互いに学校をサボってここに来ているのは明白なので、じゃあ学校へ!と言う訳にもいかないし家に帰るわけにもいかないのだ。


「時間潰しに話しない?」


 今日も青空がキレイだな・・・と空を見上げながら聞いてみた。彼女は返事をしなかったけれど立ち去りもしなかった。


「キレイなピンク色だね、君の髪も」


「ミコトと・・・お揃いになりたかったの」


「お揃いだね。姉妹みたいだ」


 そう言った僕を彼女はハッとしたように見上げて、そして呟いた。


「ミコトは妹なの、私がお姉ちゃん」と。







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