第6話ミコトの手術
目の前で、ミコトのちぎれかけていた耳が美しく縫い上げられていく。あまりの手早さと完璧な作業についつい見とれてしまった。
「何者・・・ですか?」
そう呟いた私に
「ただの平凡な中2男子です。ちょっとだけ縫物が得意な・・ね」
昨日初めて公園で出会った謎の男子中学生は昨日と同じ時間・同じ滑り台の踊り場をミコトの(手術)に指定した。半信半疑で行ってみた公園で彼は私に右拳を差し出した。
「これ、ミコトにプレゼント」
手の平に落とされたのはミコトの毛と同じピンク色の縫い糸だった。この色珍しい色なのに・・・
「ミコトの毛ってキレイなピンク色だよね。あんまり無い色だからちょっと探したけど、せっかくだから色合わせた方がいいと思って。僕ミコトの主治医だからね」
ミコトの手術の手を止める事無くそう言った男子中学生は、あっという間にミコトの耳を元の姿に戻してしまった。ミコトの主治医。私以外で初めてミコトの存在を認めてくれた気がした。
「はい出来上がり。手術は大成功だよ、数日様子を見て下さい」
ミコトの縫い終わった耳に赤いバンダナを巻き付けて手術は終了した。赤いバンダナを耳に巻いたミコトは何だか少し恥ずかしそうに笑っているように見えて、私も嬉しくなってしまった。
「ミコト・・元に戻ったよ。良かったね」
ミコトを抱き締めて私は本当に安心して・・泣きそうになってしまった。
「ありがとう」
他人に久しぶりに言った心からの感謝の言葉だった。
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