第4話サイテイの出来事

 昨日の下校時。

 最低最悪の事態が起こった。クラスメイトの中でも特に嫌いな女の子が私の前に立ち塞がったのだ。私の心のクラス名簿では彼女は(スマイル)と名付けられていた。なぜスマイルか?いつでもどこでもニヤニヤと甘ったるい作り笑顔を振りまいていたからだ。


「ねえ」


 出口を塞ぐように(スマイル)が立ち塞がった。その両脇には(レフト)と(ライト)。ちなみにどっちがどっちかの区別は付きにくい。黙って(スマイル)を見返すと、いつものニヤニヤ笑いが少し引きつった。


「$%&ちゃんが声掛けてるでしょ?返事ぐらいしなさいよ」



「そうよ、感じ悪いんだから」


(レフト)と(ライト)が(スマイル)の顔色を伺いながら口々に言った。そんな2人を満足そうに眺めて(スマイル)はいつもの気味の悪い笑顔を作り直した。


「ねえ、何であなたいつもそのウサギ持ってんの?ちょっと見せてよ」


 無遠慮に伸ばされた腕に鳥肌が立った。冗談じゃない!ミコトをこんな人に触らせるなんて!

 そんな気持ちが顔に出たのか、ただ沈黙に耐えられなくなったのかは分からない。(スマイル)はイライラと伸ばして行き場をなくした腕を組んで攻撃態勢に入った。


「大体、そんな派手なおもちゃ持って来ていいと思ってんの?リュックっていうよりヌイグルミじゃない。学校に必要のない物を持って来たらいけないのよ?」


 変な言いがかりを付け始めた(スマイル)にうんざりして、どうやって帰ろうかと思いを馳せていた、その時・・・


「聞いてんのっ?!」


 ふいにグイッと引っ張られて我に返った。目に入ったのは(レフト)だか(ライト)だかに右耳を掴まれたミコトの姿。


「やめて!」


 とっさにその手からミコトを奪い返そうと力が入った時。


 ピリリリ・・・


 ミコトの右耳が裂ける音が響いた。


 ミコトッ!!


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る