第2話  ピッピ

 私の嫌いなモノ。

 大勢のヒトの集まりとその中で群れる・・・クラスメイト。

 私の嫌いなコト。

 嫌いな人達と一緒に箱に閉じ込められる・・・無駄な時間。 

 私の嫌いなヒト。

 唯一、私をピッピと呼ぶ・・・男の子。


 私はピッピ。

 もちろん本名なんかじゃあない。だからと言って皆に愛情込めて呼ばれる様な愛称でもない。ピッピと言う名は、云わば本当の私。この名前の時だけは本当の自分のままで在る事が出来たから。

 私の容姿は親にもクラスメイトにもその他色んな人にとっても、一種異様に映るらしい。腰まで伸ばしたストレートの髪は鮮やかなピンクに染められている。その髪を長い時間をかけてツインテールに結い上げ、その日の気分に合ったリボンを結ぶ

 。それが私の毎日の習慣。

 それが私の毎朝の儀式。

 そして決して忘れては行けないもの、私の髪とお揃いのピンク色をしたウサギのリュックサック。


「ミ・コ・ト」


 ミコトは3歳の時に父親の気紛れでどこかの外国のお土産としてやって来た。それ以来私の唯一無二の親友で家族だと思っている。どこへ行くにも何をするにもミコトと一緒。ミコトが居ないと上手く息も出来ない。あまりの執着ぶりとミコトへの奇妙な接し方に親は気味悪がってミコトを取り上げようと試みた事があったけれど、手が付けられない程泣いて暴れて最後には無表情で抜け殻になった娘を見て取り上げる事を諦めざるを得なかったようだ。

 そう言う訳で私の世界はミコトと2人きりで回っていた。

 あの男の子と出会うまでは。


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