僕のピッピ
夜紗花
第1話 僕
僕の好きなモノ。
図書室の誰も来ない書庫に座り込んで読む・・・エロ本。
僕の好きなコト。
授業中に先生の心地良い声を聴きながらする・・・空想。
僕の好きなヒト。
キレイで可愛くて強くて弱くて他人が大嫌いな・・・ピッピ。
「あ~。今日も空は青いし太陽はピッカピカだったな」
教室のガタガタと立て付けの悪い机にガバッと覆いかぶさって、本日最後の授業を聞き流す。あまりにも天気が良くて美しい1日を四角い箱に閉じ込められて過ごすことに、脱力感とも焦りともつかない感情を抱くのは僕だけじゃないはずだ。
「は~あ」
1度目よりも更に大きな溜め息が自分だけはと言わんばかりに窓の外へ逃げ出して行った。
「裏切者め」
小さい声で自分の溜め息に悪態を吐いて、余計に空しくなった。授業も残り僅か。少し空想の世界にでも逃げだそうかな。
僕は小さな頃から頭の中で空想するのが好きだった。好きと言うか、自然と身に付いた自分なりに時間を有効に使う一種の才能と呼ぶべきか。2~3歳の頃は周りの大人によくボーっとしてる子だと笑われた。成長するにしたがって自分でスイッチを切り替える術を身に付けた。5歳の時、寝る前に絵本を読み聞かせてくれていた母親に「ちょっと静かにしてよ!集中できない」と言って愕然とさせてしまった。もうその頃には母親の読んでくれる絵本の世界よりも自分の頭の中で繰り広げられる空想の世界の方が格段に素晴らしく、興奮するものだった。そう、僕の空想癖は筋金入りなのだ。
とある市立中学校の2年生に席を置く僕は、至って普通の男子中学生に違いない。平均的な身長に可も不可もないルックス。短髪黒髪で少しだけ茶髪にも憧れている。僕的にはクラスで中の上ってところかな?成績は少し頑張って上の下。トータルするとやっぱり普通の中2男子だね。
そんな僕がどうしてピッピと巡り合えたんだろうと今でも不思議に、そして嬉しく思うんだ。だって彼女はとてもじゃないけど「平均的」や「普通」と言うにはあまりにも印象的だったから。
彼女の話になるとつい力が入っちゃって少し照れてしまう。可愛い顔に大人っぽい表情を浮かべて最初は怒っているのかと思ったほどだ。
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