6-2 嘘の忠誠
兼平は言う。
「一周忌には、津軽の主要な者らが集まります。そこを謀られば、たちまち危ういと思われたのでしょう。大浦家は企てるはずだと……。」
とにかく疑いを晴らさねばなるまい。事態が悪化すれば石川から、ひいては津軽すべてから攻め込まれかねない。
ここで、とある一人が手を挙げる。知恵者の八木橋であった。
「弟の政信公を説得するには、兄信直公の意を示すのが一番かと存じます。」
今は大光寺の訴えにより、弟政信の気持ちは疑いの心に満ちている。ならば兄信直に助けてくれと哀願し、政信を窘めるように一筆を書いてもらう。
信直は為信に恩義もある。いい策だろうが……これには問題がある。兼平は懸念を示した。
「北路なら野辺地と七戸、南路は三戸を通りますが、これら場所は九戸派でひしめいております。八戸に着くまでに咎められてしまう可能性があり……決死の覚悟が必要です。」
為信は腕組みをし、顔をしかめて悩む。他の者も同様であった。そんなとき、末席の方で二人が立った。そして大声で言う。
「この儀、われらにお任せいただけないでしょうか。」
科尻と鵠沼だった。
最初に科尻は言う。
「他国者であれど、大浦家に仕えることができ感謝しております。ただしそれは小笠原殿おひとりの力が認められたにすぎませぬ。」
続けて、鵠沼が話す。
「ここで我らの度胸をお見せして、大浦家のために尽くしとうございます。」
上座側、それも森岡の隣に小笠原は座っている。彼はなぜか感動しているようで、いつもの仏頂面ながらしきりに頷いていた。その様子をみた為信、二人に八戸へ行かせることにした。
為信は二人に声をかける。
「遠路、それに雪が積もる中の使いだ。寒かろうが、事は重大。頼んだぞ。」
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