2-2 用心棒

 “他国者”ですか……。


 為信はさらに問いかける。


 「理右衛門殿は万次と繋がっておられる。だからこうして小笠原殿を預かっていた。そうだろ。」


 理右衛門は思案している顔だ。


 「そうですね……。万次殿には月毎に銭を渡しております。」


 もしやそれは喝上げか。


 「いえいえ、違います。用心棒としてでございます。これがたいそう役立つのです。」


 ……このような大きい港町には、警護が必要。大浦家の保護を受けてはいるが、突然の時には陣所から出遅れてしまう。そのようなときに、彼らの出番である。


 「五年前に、海から荒れ者らが押し寄せた時がありました。為信様がいらっしゃる前でございます。万次殿のお仲間が、見事退治してくださいました。」


 「私は港町久慈の出だが、そういう出来事は一度もなかったぞ。」


 理右衛門は口を手で隠し、微笑んだ。


 「そうでございましょう。久慈は南部様の港といえど、漁船しかない。鯵ヶ沢は大きな船が行きかう裕福な町。襲うだけの価値があります。」


 ……“者”は、使いようでございますよ。


 うむ……


 為信は腕組みをし、しばらく考え込んだ。理右衛門は、手元にある茶碗をとり、残りをすする。


 …………


 「……ひとまず、家来に命じて港警護の強化を訴えよう。しかし……。」


 はて、なんでございましょう。


 「お主はなぜ、あのように金をばらまく。用心棒代は仕方なかろうが、一揆勢すべてに行きわたるような銭の多さ。もちろん、飢えることなく助かりはしただろう。……そこまでする訳はなんだ。」

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