第18話 運命との対面
これも運命か。と思いながら約一ヶ月が過ぎようとしていた。もしも本当に運命というものが存在しているのであれば、この恋愛こそが運命なのではないか。という気がしていた。私にしては珍しい非論理的解釈だが、私がそのように感じたのは事実だ。その後紗奈とは毎日電話でやりとりをしていた。紗奈とは遠距離なのだ。遠距離だからこそ電話の意味があるのかもしれないなと私は思っている。電話の内容は他愛もないものだが、毎日電話するのもなかなか楽しいものだと初めて感じた。私はそもそも電話やSNSや手紙などの類いは苦手としているのだが、紗奈との電話や彼女に宛てる手紙を書く事はなんの苦労にもならなかった。むしろ自分の思っている事を整理する事が出来て良いくらいである。
私は元々運命や奇跡などの類いは信じない方なのだが、この出会いには運命を見出すほかになかった。神も仏も信じない、私は私だけを信じて生きている。その私ですら運命だと言うのだから、きっと紗奈も同じように感じているのだろう。私はなんだか実態の存在しない運命とやらに対面した気持ちであった。その運命とやらはイタズラ好きで有名で、運命のイタズラという言葉があるくらいである。そんな運命様と対面出来るなんて幸せな事なのかもしれない。もちろん実際に運命という存在に会ったり触れたりした訳ではない。ただ運命というものを感じ取っただけに過ぎない。
それでも私は運命と対面した気分であった。運命にイタズラをしないようにと念を押し、疲れた人を運ぶ満員電車に揺られて、今日も家路に着いた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます