第17話 再開と再会
独り身となった私はシティホテル暮らしになっていた。大学の1限は9時からで、とても自宅から通える時間ではなかったからだ。なので1限があるとき限定でシティホテル暮らしをしていた。まぁなかなか悪くないものである。しかしさすがに失ったものが大きすぎた。私は孤独だった。そんな所に1通のメールが来た。今どきメールなんて送るのは詐欺だと相場で決まっている。そんなメールに自分でもバカだと思いながら返信をした。差出人の名前が昔縁のあった人物だったからだ。すぐに返信が来た。私に会いたいという内容だった。腐れ縁とまでは言わないが、縁というのはほとほと怖いものだと私は思った。
私が彼女に会ったのはそれから3日後だった。名前は紗奈である。紗奈とは一年程前からの友人である。要件はなんだと問うと、ただ会いたくて。というものだった。
紗奈は私が返信するかも分からないメールを送ってきたという訳だ。そして内容はまた話したいというのだった。返事は私次第だ。しかし返事などもう決まっていた。私は紗奈のことをよく知っている。どんな人間でどんな人物なのかも一年前から知っているのだ。だから答えを出すのはそう難しいことではなかった。答えはイエスであった。私はこの瞬間孤独から解放された。紗奈のほうもきっと同じだろうと感じた。懐かしい話で盛り上がり夜になり、私は1リットルのミルクティーを飲みながら語り明かした。紗奈のほうはワインを嗜んでいた。白ワインである。少し酔ってきた様だと紗奈はいう。彼女がお酒に強いのは昔から知っているので、これがどういう意味なのかは大体察しがついた。半分頬を赤くした紗奈と私は昔のように戻った。まるでタイムリープしたかのようにそのまま戻った。同じホテルで同じ瞬間を刻んだ。タイムリープじゃないのは私が歳をとっている事が証明してくれたが、本当にタイムリープをしている感覚だった。まるで深い水の奥底で眠っていて、今地上に上がったかのような感覚であった。深い水の奥底では衣服など不要だ。そのままの姿のお互いを見て、太ったね。等と冗談を飛ばしてくる彼女を私は狂おしい程愛した。ミルクティーはまだ残っていた。時間は夜2時を指していた。新しい恋が始まった瞬間であった。
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