第16話 1リットルのミルクティー

 青天の霹靂というのは本当にあるもので私にとっては本当に青天の霹靂であった。

 何のことかというと、絵里との別れである。私はその刹那全てを失った。東京にはもう居れないし、絵里という存在も失った。もちろん自分の中で消化しきれてはない。ただ、余りにも刹那的で現実か空想か分からなくなったのも事実だ。私にとって絵里との数ヶ月は、他のカップルの数年分に相当すると感じている。毎日会い、毎日一緒だったのだから。それが当然だったのだから。青天の霹靂の刹那。美しくも散っていった私の絵里への思い。そして絵里から私への思い。まるで今まで何も無かったかのように全てが無くなった。消失してしまったかのような感覚に陥る。どんなに睡眠薬を飲んでも寝れないこの感覚はなんなのか。きっとこれが心に傷を負うという事なんだろうと感じた。ただ私に残されたのは絵里の部屋に買い溜めしておいた1リットルのミルクティーだけであった。ミルクティーを飲みながら、のんびり考えると私の滑稽さが露骨に浮かんで来た。ミルクティーだけが私に残されたものだとしたら、

 そんな滑稽なことはないな。と思いながら私はシティホテルへと帰る事にした。

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