第15話 幸せを運ぶ青い鳥

 最近はどこを見てもみんなスマホ、スマホである。なにを言っているのだ。と言われるかもしれないが、そのまんまである。それは電車の中であろうが、キャンパスの中であろうが、講義中であろうが、トイレの中であろうが、どこでもみんなスマホをしているからである。今日がハロウィンの日というのも拍車をかけているのか、街中見渡す限り皆スマホを触っている。友達同士でいる時もそうである。なぜ直接話さないのか?それとも彼らは通信対戦式ゲーム等で遊んでいるのか?私には分からない。貴重な学生時代の一部を、いや正確には大部分をスマホで過ごしているような。そんな学生が増えている気がする。もちろんこれは大学生に限ったことではなく、小中高生も同じである。近年の中学生はGPS付きのスマホ等を持っていて、親はそれを渡して子供の場所を把握しているらしい。なんともハイテクノロジーかつ寂しい時代なんだと悲観的に感じる私は、ひねくれ者なのかもしれない。さらに言うと最近のCMは学生時代だからこそスマホで遊ぼう!のような広告が多い気がする。いやいや大人が電車でスマホゲームしているのを見てないのか?と問いかけたいくらいである。大人は時間がない。と良く言うが、通勤時間なんてものは基本暇である。満員電車で仕事は出来るはずもなく、彼ら彼女らはスマホゲームをして時間を潰すのである。つまりスマホで遊ぶ等ということは大人になってからも出来ることであり、学生時代にしか出来ないなんてことはないのである。学生時代という今しかない時間を大切にしないで、これから数十年と馬車の馬の如く働くなんて想像しただけで寒気がする。まぁ実際に今は寒い。もう気付けば11月で、今年の終わりも近付きつつある。きっとこのまま行くと、ハロウィンだー!クリスマスだー!年末だー!お正月だー!というようにイベント三昧なのであろう。私にはお正月くらいしか理解出来ないが。そんな私のほうが学生時代を楽しめてないのかもしれない。そのような捉え方も出来るから仕方ない。しかし私は私なりに学生時代を大切にしているつもりである。休日は映画鑑賞。平日は講義を受け、昼休みは友人と話す。なんとも楽しい学生生活ではないか。と私は思っているのだが、他者からはきっとつまらないやつだ。とかなんとか思われているのかも知れない。もちろん絵里のことを話したらその意見も変わるのだろうが、私は人の評判等気にしないので、敢えてひけらかすような事はしない。最近はやたらとひけらかす様な学生が多い。青い鳥のマークのアプリを開きすぐに何か書き込む。あるいは人の書き込みをチェックしたりしている。それも数秒刻みにだ。あの青い鳥は一体何を運んできているのか?それは幸福か?それとも時間を奪って去っていくだけなのか?あるいは、人と人との繋がりを保つ代理人のような存在なのか?私には分からない。分からないから私は青い鳥のアプリを入れてない。周りからはそれだけで変人扱いされたものだが、私から言わせてもらえば、頻繁にチェックする彼らのほうがよっぽど可笑しいのだが。それとどうやら、青い鳥に操られているのは学生だけではないようだ。電車では大人も青い鳥の虜である。熱心に自分の仕事の事を書いている人もいれば、面白動画などを共有している人など様々な人がいる。結局スマホ時代となった今、人々は青い鳥に支配されているのである。私には青い鳥の魅力が分からないが、きっと青い鳥には人々を魅了する何かがあるのだろう。それはきっと現代社会の寂しさや孤独さを紛らわしてくれる何かなのかもしれないし、単なる面白さなのかもしれない。私が深く考慮し過ぎているだけで、本当は幸せを運ぶ青い鳥なのかもしれない。しかし人情味を失った人々を見てそれが本当に幸せなのか?と問いかけられたら、幸せとは言い切れないだろう。幸せの形は様々だが、やはり直接会って話したり遊んだり、時には呑んだり食べたりするのが本当の幸せなのではないか?と私は思ってしまう。そんな事を考えながら池袋の街を歩いていると、どこからか素敵な洋楽が聴こえてきた。こんなのもきっと青い鳥の仕業なのかもしれない。と思うのはさすがに捻くれ過ぎてるな。と悲観しながら私はその洋楽の聴こえる所を目指す。辿り着いた場所は大きな液晶パネルのある場所だった。洋楽はそこから流れているようだ。しばらく見てると、やっぱりあの青い鳥が出てきた。やっぱりである。やはりこの社会は青い鳥に支配されている。それは誰も知らない内に訪れたものなのかもしれないが、誰も知らない内に我々は青い鳥に支配されている。今日もあちらこちらで青い鳥が鳴いている。その青い鳥がなにを運んできているのかは、誰も知る由もない。

 ただ、人々は今日も青い鳥のアプリを開く。きっと今もどこかで…

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る