第14話 週休4日のヒマ男ヒモ男

 全く出だしから最悪のタイトルではないか。何事もスタートダッシュが肝心だとどこかの偉い学者先生が述べていた気もするが、その理屈を拝借すると私のスタートダッシュは最悪のものであり、この後の結末も最悪なのだろう。始まりと終わりは良ければそれで良い。というような諺があるが、始まりが悪いやつの終わりなんて悪いに決まっているのである。とまぁ、こんな皮肉や理屈好きなのもハッピーエンドへ向かえない要因なのかもしれない。そういえばどこかの誰かが言ってたが、男女というのは腐れ縁といって別れた後もずるずると友達関係が続くらしい。まぁ、あれこれ言ったが結局他者から見ても私のバッドエンドは見えてる様なものらしい。私としては良い気持ちはしないが、立場を置き換えれば私だってそう思うだろうな。と思いコンビニの雑誌を読みながら笑いを堪えた。そうだ。今日はワインを買いに来たのだ。まぁ、ワインは買ってあってコンビニにはワインオープナーを探しに来たのだが、都会のコンビニというのはいつ言っても混んでいて、とても店員に聞けるような状況ではない。そして私は探し物が下手だ。だからこうして雑誌を立ち読みし、店が空くのを待っている。もう1時間が過ぎようとしている。ここまでくるとさすがに、私が自分で1時間かけて探した方が良い気もするが、そもそもこのコンビニにワインオープナーがなければ話にならない訳である。という理屈で私はまたつまらない週刊誌へと手を伸ばした。ちなみに私の買ったワインは「2006年物のシャトーフランカルディナール」である。私こだわりの逸品だ。普通は手に入りにくいが、ワイナリーとの直通電話があるので、まぁ大体のワインは愉しむ事が出来る。そんな中で見つけたベストアンサーが2006年シャトーフランカルディナールである。まぁ、ワインオープナーが無かったら、ツマミでも買って帰ろうとは思っていた。だから、ワインオープナーが無くても、私がこのコンビニに来た意義はある。と下らぬ言い訳を自分に言い聞かせ、結局ツマミだけ買って帰ることにした。時計を見るともう夕方であった。そういえば、私はヒモ男なのであった。この腕時計もヒモ男には不釣り合いな物なのだろう。私の時計はTAG Heuerカレラクロノグラフである。ストップウォッチ機能が付いていてかなり高機能な代物なのである。が私が勝手にカスタムしたせいで今はほぼ腕時計型の凶器となっている。見た目は変わらないが針やら火種やら、睡眠薬を収納するスペースなどが付属している。もちろんこれは絵里には秘密だ。バレたらきっと即刻追い出されるだろう。ヒモ男の扱いなんて結局そんなものなのだ。そしてオマケにヒマ男でもある。絵里がアルバイトに精を出しているときに私は映画鑑賞をしている。別に悪い事をしているつもりは微塵もない。私の趣味は元々映画鑑賞と読書なのだから。ただ、アルバイト帰りの絵里にはヒモ男に見えるようだ。まぁそれもそうだなと思いながら今日も映画鑑賞を続けている。私が好きな映画はB級映画だ。あの予算が無さそうなCGやらキャスティングやらがなんとも言えない滑稽さを生んでいて私は好きだ。これは別に皮肉ではなく本心である。さて、こんな事を言っていると映画鑑賞をしたくなってきた。ワインオープナーは諦めてツマミだけ買って家に帰ろう。どうせワインオープナーなんて無くても私のTAG Heuerカレラの針を使えば栓抜きくらいは容易である。まぁ、絵里に見つからないように栓抜きしないとまずいというデメリットはあるが…それよりも映画鑑賞である。今日も東京の街にワインを持ったヒモ男の姿があった…

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る