第19話 空虚な春休みとピンポン玉と

私の春休みはスケジュールすっからかんの暇人生活になっていた。というのも紗奈が受験シーズンに入ったからである。紗奈は18歳、私は20歳という歳の差なのでこればかりは仕方ないのだが、それにしても時間という貴重なものを無駄にしている気がするのである。どうせ大学が始まったら忙しくなるのは目に見えているので、この空虚な春休みも許せるのだが、心の片隅に時間を有効活用しよう。という気持ちがあるのである。それならアルバイトでもすれば…と思う人もいると思うがアルバイトはドクターストップで出来ないのである。つまり私の春休みは仕事も出来ない、遊びにも行けない。というそんな春休みなのである。

暇人生活を送っていてふと思う事があった。自分の部活についてのことだ。顧問はひどいもので「努力は嘘をつかない」という言葉が大好きな人であった。無論私は努力だって嘘をつくと思っている。顧問は努力せずに成績を出す生徒を嫌っていた。私はその中の1人であり、先輩達が練習してる中、1人部室でマンガを読んでいる。それなのにレギュラーメンバーというひどい有様であった。しかも一年生からこれを続けていた。他のメンバーの成長も感じたが私はマンガを読んでいるほうが良かった。そんな私は顧問にいたく親切なほどに嫌われていた。当然である。体育会系である彼の目には私は愚物としか映らないのである。私はしぶしぶ練習をした。もちろんこの時もレギュラーであった。練習をすればするほどつまらない試合が増えた。サーブだけで勝てる試合なども出てきた。私は余計この部活が嫌になった。そして来たる最後の最後の大会。県大会出場がかかった大事な試合で私を出さなかったのである。もちろん顧問の方針で。後日談は聞く程もないが、あの時お前が出ていれば。と部長など部員全員から言われた。しかし私が出ていても結果は同じであったのだ。県大会に出てしまうと夏まで練習しなくてはならない。早々に負けたかった私は試合に出たら早々に負けていただろう。もちろんわざとであるからそれっぽい負け方にはするつもりであったが。そんな経緯があり私は体育会系が嫌いになった。努力が嘘をつかないなら私に負けていった努力者達は報われない訳ではないか。だから私は努力も嘘をつくと感じている。マンガを読んで試合をしようが、真面目にやって試合をしようが、同じである。勝てばそれでいい。負けないならそれでいい。というのが私の考えであった。部活から解放された今ふと蘇った過去の記憶。私はもう2度とあの部活に入りたくない。そう思いながら引退した。そのスポーツを今大学のサークルでしている。仲間も出来た。スポーツ自体が悪い訳ではないのだなのこの時実感した。スポーツの美しさ楽しさに気付かせてくれたこの地味だと言われるスポーツに、私は誇りを持って今取り組んでいる。そして今日もピンポン玉の音が鳴り響いた…

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