第6話 男女の同居とそのだくん。

 とうとうこの生活が当たり前のようになって来た。私の財布には新しく仲間入りしたアメリカ紙幣のデザインの金色のカードが入っている。家族カードなる代物である。これで絵里の家に通販で買った食品を送ることが出来るようになり、私自身もカップラーメン生活ではあるが、出費は抑えることが出来ている。請求は親の元へいくらしく、私にとっては素晴らしい仲間となった。絵里もこのデザインは気に入っているらしく、この金色のカードは2人のお気に入りとなった。もちろん外食やデートなどのお金はバイト代から出している。このカードを使うときは通販の時と、百貨店に行った時くらいである。この謎の新しい仲間の力は凄まじく、これを出すと対応が変わるのだ。学生だからと蔑んだように見られていた私への接客が明らかに変わった。同じ接客業をやっている私からしたら、それはもう極めて不愉快なものではあるが、このちっぽけな金色のカードで態度が変わるのもそれはそれで愉快なものであった。

 絵里と私のデートは百貨店が主である。私の相棒のそのだくんも百貨店育ち?というようなもので、まぁ簡単に言うと絵里が百貨店で買ったのである。今日はそのだくんの兄弟になるような商品を探しに来たのだが、生憎そのだくんは居なかった。帰りの電車で会話をしていて気づいたのだが、私と絵里との会話は私達とのことか、そのだくんのことかのどちらかである。絵里にこのことを伝えたら、それはもう可笑しかったようでずっと笑っていた。今回のデートで気づいた事はあの不思議なカードの魔力以外にもあったことに気がついた。それはあのそのだくんがあってこその、私達であり、私達あってのそのだくんなのだということである。私達がいなければ私の相棒はただの抱き枕になっていたに違いない。いや、今も正しくはそうなのだが、2人のコミュニケーションツールとして重要な役割を担っている頼もしい存在なのである。今日もそのだくんは私と絵里の真ん中で抱き枕をしてくれている。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る