第3話 何かが始まり歯車が動き出す

 キャンパスライフ3日目の今日は健康診断である。昨日の事はなにもなかったかのように振る舞う絵里に、多少なりとも戸惑いを感じながらも、あれはきっとなにかの間違いだったんだ。と自分に言い聞かせている自分がいた。相棒になるはずだった、抱き枕のそのだくんに別れを告げ私はキャンパスに来た。健康診断とは言ったものの私のライフはゼロなのである。無論原因は昨日から狂った歯車なのであるが、そんな事は知らぬ私の表面上の友人達と私は健康診断へと繰り出した。健康診断の内容は血圧と身長体重の測定である。語る必要もないが、すぐ終わった。周りは背が縮んでいた。等と他愛もなく下らない会話をしていたが、今の私には自分の身長体重等どうでも良かった。昨晩、いや正確には今朝のことは本当に現実に起きたことなのかと、未だに理解することが出来なかったのである。しかし確かめる術も無ければ絵里に聞くのも難なので、私は自宅へと向かうことにした。たった1泊2日の短い旅がものすごく長く感じた。旅という表現も可笑しいが、実際に私には東京という見知らぬ街での遠い旅の様な2日間だったのである。しかし自宅に帰ったのに落ち着かない。なぜか不安感と寂しさに駆られる私がいた。この寂しさは絵里がいない寂しさなのか、それとも相棒のそのだくんがいない寂しさなのか、無論後者のはずがない。でも前者のはずもない。と言い切れないのが癪に障る

 絵里とは会ってまだ3日しか経ってないのである。私が特別な感情を抱くのには到底短過ぎる期間であるし、それは絵里にも同じ事が言えるであろう。私はこのなんとも言えない寂しさを後者の相棒のせいにすることにした。抱き枕に罪はないのだから…

 そして、私はここで気がついた。昨日の出来事に関して誰にも罪がないのではないかと。油断した私にも過失はあるし、絵里にも過失はある。いずれにせよこれで相殺でいいじゃないかと私は思った。別にこれが初めてという訳ではないのだから…

 そう言い聞かせながら私は相棒のいない自宅のベットに飛び込んだ。セミダブルの大きめのベットが余計寂しさを感じさせる。そもそも私には抱き枕のそのだくんなる相棒は元々いなかった訳であるし、絵里という女性もいなかった。つまり3日前までは普通だったこのセミダブルが、今日は妙に広く感じる。この日私はシングルにすれば良かったな等という無駄な事を考えながら眠りにつくことにした。どこかで聞いたことのある、眠ると頭が整理される。というなんの根拠もないような情報を信じながら…

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