そのえがおにおくるのは
「私って暇つぶしなのかなぁ」
目の前には肩までのセミロングをハーフアップにした
「それはない……と思う」
食べ終わったお弁当を包んでスクールバッグに入れながら、返す。言い切れないのは、未里の彼氏である
「
「え?」
「ワンコ君にあげるんじゃなかったっけ?」
「ああ……それがね」
今朝の出来事を話すと、未里が苦い笑みを浮かべる。
「それはなんというか……。男子バスケ部もモテるもんねー」
「いや、まあそうなんだけどさ。立花君はモテるというより、構ってあげたくなるというか」
「あ、わかる。あのワンコスマイルを見ちゃうと、お菓子とかたくさんあげたくなるよね」
「そうそう。それで渡してる人が多いのかなって思う」
「思う、じゃなくて、思いたい、じゃないの?」
未里がニヤニヤと笑いながら痛いところを突っ込んでくる。
「う……っ。まあ、そうとも言う、かな」
ずっとドアを見ていた未里の目が、スッと細くなる。
「あ、噂をすればワンコ君」
「え」
勢いよく未里と同じところに目を向ける。すると誰かを探すように教室を見ている立花君がいた。立花君は私と目が合うと、あのワンコスマイルを浮かべて大きく手を振ってくる。
「佐藤先輩!」
「呼ばれてるよ」
「……うん」
私は早くなっていく鼓動をなんとか無視して机に手を置き、立ち上がる。するとトントン、とその手を叩かれる。振り向くと、未里が小さく微笑んで私を見上げている。
「アレ、持って行きなよ」
瞬間、頰に熱が集まる。
「でも……」
「もう。今までの練習にずっと付き合ってたんだよ? 私。出来上がったのを食べては、アドバイスしたのにな」
「……」
ギュッと拳を握りしめる。そうだ。この日のために、私はわざわざ未里に協力を頼んだんだ。無駄にするわけにはいかない。握りしめた拳を開いて、スクールバッグに手を入れる。そして取り出したのは、ピンク色の小さな紙袋。
「行ってきます……!」
「行ってきな」
私が小さく頷くと、未里が手を振ってくれる。頑張ろう。
紙袋を手に、私はドアに向かう。
「すみません、その……。バスケ部のことでちょっと相談があるんすけど、今いいっすか?」
「いいけど……私で大丈夫?」
バスケ部にはマネージャーとしてしか関わったことがない。だからこその
問いかけだったが、立花君はいつものワンコスマイルを浮かべて頷く。
「はい!」
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