第24話 こんな臆病者がヴァリアンツって
「は?
何言ってんの、コイツ。
いまさらそんなこと言ったって、遅いってことが分からないのかな」
エリシャは鼻で笑った。
戸惑ったルカはエリシャにささやく。
「本当にヴァリアンツなの?」
建物にまだ残っている近隣住人も、疑いのまなざしをエリシャにそそいでいた。
「間違いないよ、ほら」
老人の腕をつかんだエリシャの手が輝く。
異臭が強まる。
苦悶する老人の体から、腕が落ちた。
床に転がった腕が、切り離されたトカゲのしっぽのように踊った。
老人の姿がきしみ、異形へと変貌する。
建物の中にいた住民たちは、一目散に逃げだした。
ヴァリアンツは、エリシャに組み敷かれたまま、うめき声をあげた。
「カンベンしてください!
私は、戦いがイヤで逃げてきたんです、本当です!
私も地球に亡命させてほしい、エミティノート技師のように」
エリシャとルカは、驚きのあまり目を見張った。
警戒心をむき出しにして、エミティノートが言う。
「どうやってそれを証明するつもり?
私の口添えなんか期待しても、意味ないわよ。
しょせん、私だって地球側に便利に使われているだけだもの」
「ウェイルノート隊長の居場所を知っています。
他にも、私の知っている限りのことは、すべて教えます」
「……でも、どうして逃げてきたの?
よほどの覚悟が必要でしょうに」
「私は……怖かった。
ウェイルノート隊長は地球と刺し違えるつもりです。
あの方について行っても、いずれ命を失うだけだ。
……死ぬのが、怖かったんです」
不快気に眉をしかめ、エリシャはエミティノートに尋ねる。
「こんな臆病者がヴァリアンツって……。
こいつ、知り合い?」
「知らないわ、下級ヴァリアンツと、私は身分がちがうもの。
管理職は貴族、技術職は私のような平民、その他雑用は下層民と出自と職種が決まっていて、階級間の交流はほとんどないのよ。
下層民は確かに多くいたけど、私は個人的な関係を持っている相手は一人もいないわね。
まあ、私は業績あるから、名誉爵位はもってるけどね」
ルカは困惑して、エミティノートに尋ねる。
「どうする?
本人は闘いたくないみたいだけど……一緒に連れて帰ろうか」
「そんな必要ないよ。
ヴァリアンツは全員殺す」
エリシャの手が光を増す。
ヴァリアンツは絶望の悲鳴を上げた。
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