第22話 なんだか、なつかしいよね
ピアリッジは、久しぶりにエミティノート共に外へ出た。
トビヒトの依頼で、自衛隊の作戦に同行したのである。
着いた場所は、エリシャとルカの住んでいた町であった。
防犯カメラの分析結果から、付近に、下級ヴァリアンツが潜伏していると推測されていた。
が、間もなくヴァリアンツは住民に紛れてしまった。
防犯カメラに映っていた対象は、死体となって発見された。
体を別の人間に乗り換えたのだ。
いまだ対象を絞り込めていない状況であったため、警察は、住民を近隣の公共施設に集めた上で封鎖し、厳戒態勢を取っている。
そこへ乗り込むのだ。
エミティノートは数十メートル程度にヴァリアンツが接近すると、その存在を感知する。
エリシャとルカはエミティノートを連れ、町内をくまなく歩きまわった。
ルカはいささか切なげに言う。
「なんだか、なつかしいよね。
ピアリッジになってから、いろいろありすぎて、学校に通ってたのがすごく昔みたい」
「そうだね。
あの時は、毎日、退屈で死にそうだったなぁ」
二人は、ずっと手をつないで歩いていた。
万一、ヴァリアンツの不意打ちを受けたときのため、というのがエリシャの主張であった。
「そうなの?
いつも元気だったよ」
「そんなフリでもしてないと、みんなの期待を裏切るでしょ?」
「……よくわからないけど……。
今は?」
「もちろん今は、楽しいよ!
だって、ルカいるし!」
満面の笑みで、エリシャはルカに情熱的な視線を向ける。
困ったルカはあいまいに笑った。
二人の服装は、迷彩服でも普段着でもなかった。
政府が多額の資金と優秀な人材をかき集め、急きょ開発されたピアリッジ用の戦闘服である。
強力なエネルギーにも耐え、拳銃弾ていどなら貫通しない特殊な材質で作られていた。
さらに、普段は手のひらの大きさに折りたたんで携帯することも可能で、また、電流による形状記憶によって、装着も瞬間的にできる機能性も備えている。
装着した姿は、一見、妙な色のジャージにしか見えない。
「やっぱこれ、ダサいよね。
迷彩服のほうが、よっぽどかっこいいし」
文句を言うエリシャ。
ルカは苦笑するしかない。
正直、自分もダサいと思っていたのだ。
が、わざわざ自分たちのために作ってくれたものに、ケチをつけるのも気が引けた。
ながながと細い路地まで歩き回った結果、エミティノートはヴァリアンツを発見できなかった。
「おかしいわね……?
カンがにぶったのかしら」
「もう一周してみる?」
と、エリシャ。
エミティノートは尻尾をくねらせる。
「そうね……もしかしたら、地下室のある家に潜んでいるのかも」
「ちょっと歩き疲れちゃった。
一休みしたいな」
ルカが言った。
エミティノートとエリシャはルカに賛成した。
三人は、住民が隔離されている公民館へと向かった。
そこなら、あわよくば食事にもありつけるかもしれない、という判断だった。
公民館の周りには、武装した警官が立っている。
ピアリッジを見ても、表情一つ崩さない。
入り口を固めていた警官が横に移動し、人の通れる隙間を作った。
その入り口に差し掛かった時、エミティノートの毛が逆立った。
「いる!
この近くに、ヴァリアンツがいるわ!」
エミティノートの視線の先には、公民館があった。
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