第16話 わたしよりあなたのほうが、ずっと大事
エリシャの眼は、閃光にくらんだ。
まばゆい光が、空を薙ぐ。
ヴァリアンツの一人が、炎に包まれる。
エリシャのそばに、ルカが立っていた。
組み合わせた両手から、長大な光の剣がそそり立っていた。
炎を振り払い、ヴァリアンツは後方へ跳んだ。
ルカの息は荒い。
先ほど一撃を食らった背中はやけただれ、体液がしみ出していた。
だが、目前でエリシャが死に瀕している光景を見ては、自分の体などに構ってはいられなかった。
ルカはヴァリアンツへと走る。
やみくもに剣をふるうが、ヴァリアンツたちはただ後ろへと下がるだけで、かすりもしない。
ヴァリアンツから、いくつもの光球が飛んだ。
ルカの周囲に着弾し、次々と爆炎を上げる。
とまどうルカの頭上を、ヴァリアンツが飛び越してゆく。
横たわったエリシャへ襲いかかった。
ルカの心臓が凍り付いた。
ヴァリアンツは、まず強敵であるエリシャの息の根を止めるつもりなのだ。
戦いに慣れていないルカは、後回しにしてもいいとの判断に違いない。
刹那、ルカは迷った。
目前には、すでに両手に光剣を携えるヴァリアンツがいる。
が、宙を跳ぶ敵を捨ておくことは、エリシャを見殺しにすることだ。
ルカは、後方に着地しようとする敵に光の長剣をふるった。
何もない空中で避けるすべもなく、ヴァリアンツに刃が命中する。
ヴァリアンツは無様に地面にたたきつけられた。
もう一人のヴァリアンツが放った斬撃が、ルカを襲う。
ルカは寸前で全身にエネルギー波をまとった。
強烈な衝撃に全身が硬直する。
その場に倒れた。
どうにか致命傷ではなかったが、体を動かす自由が失われていた。
芋虫のように体をよじらせ、エリシャに向かって進む。
ルカに攻撃を受けたヴァリアンツは、エリシャにとどめを刺すべくよろめき歩く。
無防備なエリシャにルカは覆いかぶさった。
ケガを負ったヴァリアンツの手のひらに、光が瞬く。
ルカの背に食い込んだ。
悲鳴を上げるルカ。
その時、エリシャの手から、光弾が飛んだ。
ルカに痛打を浴びせるヴァリアンツを、光球がとらえる。
最期のためにとっておいた、エリシャ渾身の一撃だった。
ヴァリアンツはその場に昏倒した。
「ルカ!
エリシャ!
大丈夫?」
道路から、車の音が聞こえてくる。
声の主はエミティノートだった。
形勢不利と見たヴァリアンツは、たおれた仲間を背負い、姿を消した。
薄れる意識の中、弱々しい声でエリシャはルカをしかりつける。
「バカ!
どうして先にあいつらを殺さなかったの?
あたしなんかこんなになっちゃって、もう戦えないのに」
苦痛に顔をしかめ、ルカは答える。
「わたし、エリシャみたいに戦えないから……。
弱いわたしより、あなたが生きたほうが絶対いいと思ったの」
エリシャには返す言葉がなかった。
二人はそのまま意識を失った。
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