第15話 死んでも奴らに負けたくないのに
両腕から長大な光条を伸ばし、エリシャは前方の敵に躍りかかった。
光の帯が、互いに異なる軌跡を描き、闇を切り裂く。
隊長と呼ばれたヴァリアンツはエリシャの剣をすりぬけ、光剣をふるう。
エリシャはやすやすと斬撃をかわした。
次なる攻撃に移ろうとした時、自分の影が鋭く前に焼き付けられる光景を垣間見た。
とっさに、横に飛ぶ。
もう一人のヴァリアンツが、光剣を地面に食い込ませた。
地にしゃがみこんだエリシャの剣が突き出された。
ヴァリアンツは宙に高々と飛び上がり、攻撃を避ける。
もう一方の剣で、跳んだ敵を切り伏せようとするエリシャだったが、その刃は隊長に弾かれた。
迫る隊長にカウンターを食らわせようと、剣をふる。
が、隊長は難なくエリシャの苦し紛れの攻撃をよけた。
エリシャの両手から、剣が消えた。
かわりに、光球が両手から飛翔する。
着弾した光の弾丸は、激しく炎を上げて、爆発した。
その隙に、エリシャはヴァリアンツから距離をあける。
いつのまにか息が上がっていた。
焦燥感の苦みが胸を浸す。
これまでのように、エネルギー波を操ることのない下級ヴァリアンツや、単独の高級ヴァリアンツを狩る時とは、様子が全く異なっていた。
敵はピアリッジの襲撃に十分備えており、強化された人間の肉体を操る術も熟達している。
なにより、ピアリッジに対する殺意が、キリのように突き刺さってきた。
素早くヴァリアンツが迫ってくる。
エリシャは手足をおもりのようにからめとる深い疲労感をふりはらい、光剣を出す。
左右から殺到する相手に、それぞれ剣を突き出した。
攻撃はあっさり打ち返される。
エリシャの体は攻撃の勢いに弾き飛ばされた。
道路わきの電柱に衝突する。
音を立てて、電柱が倒れた。
エリシャから光の剣が失われていた。
半ば失神しているエリシャに、ヴァリアンツが油断なく近づいた。
倒れているエリシャに光剣の一撃をお見舞いする。
かろうじて意識を取り戻したエリシャは、素早く地面を転がり、ヴァリアンツの足元まで接近する。
ヴァリアンツの胴体を狙って、エリシャは倒れた態勢で蹴りを繰り出した。
その先端には、エネルギーの刃が輝いている。
が、渾身の攻撃も、敵には届かなかった。
エリシャの脚が宙を舞った。
ふとももから、足が切断されていた。
驚愕するエリシャの腹を、ヴァリアンツが蹴り上げる。
獣のような悲鳴を上げ、エリシャはエビのように体を丸め、嘔吐した。
「こんな……こんな奴らにやられるなんて……!」
エリシャは悔しさに涙を流した。
死への恐怖よりも、敵に倒されることが無念だった。
頭上に死の刃が輝いた。
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