恋の魔王使い

暖かな日が照っている。二人はなにをするでもなく椅子に座っていた。

「ねえ、アメリ。わたしたちはなんなんだろう」白い耳を揺らして、リカが疑問を口にした。

「うん?」リカの言葉の真意を測りかねて、アメリが聞き返す。

「私たちの魔法使いとしての力はどんなものなのかなって思ったの」魔法使いの力は各々で少しずつ性質が違うと教えてくれたのは婦長さんだった。アメリはそれを口にした。

「ああ、恋の魔法使いだよ。私も、リカも」リカは目を瞬かせた。

「リカは悪いものを好ましくする浄化の魔法で、私は痛い気持ちをなくす甘さの魔法」いまだ納得しかねるリカに、アメリは噛んで含めるように話す。近頃のリカはアメリと仲良くすることに成功している、一時期あった怯えはもう影もない。

「これから、わたしにもできるかな」リカははにかみ笑いを浮かべた。

「そうだね。できるよ」アメリもにこにこと微笑み返す。リカは嬉しそうにアメリの手を取った。アメリはぎょっとしてリカを見返す。身体の接触に慣れていないのだ。

「すこしずつだけど、頑張るよ」ぎゅっと手を握られて、アメリはどぎまぎした。

「無理はしないようにね」どうしていいかわからずに迷った末、アメリもリカの手をぎこちない動きでそっと握り返した。頬が紅潮するのがわかって、思わずアメリは顔を伏せた。

「うん」これもリカの魔法の力なのだろうかとアメリはうるさい鼓動の中で考えた。

白黒の耳、その色の境目が、頬と同じように桜色に色付いていった。

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