メリーとリカ
窓の外では緑色の木漏れ日が地面にゆらゆらと影を落としている。太陽は高く、風が雲を吹き散らすのをアメリはぼんやりと眺めていた。仄暗い室内に緑の光が差し込み、時折アメリの顔を照らす。
「なにか考え事してるの?」突然降ってきたリカの声に、アメリがはっと振り返る。
「私の、私にとって大切な人のことを思い出していたんだ」随分と驚いたらしく、アメリの声が裏返る。最初は弾けるように飛び出した言葉はだんだんと静かになり、目は再び窓のほうへ向けられた。
「わたしの知ってる人?」リカはアメリと同じように窓を眺められる位置の椅子に腰を下ろした。
「今のリカにとっては知らない人だね。リカはどうだった、そんなひと、いなかった?」頬杖をついたアメリが手の隙間からリカをじっと見た。いた気がする、そう言ってリカは考え込み、やがて彼女の脳は一つの答えを吐き出した。
「そう。確か、メリーっていうの」いとしい名前を、何度も確かめるように繰り返したリカに、アメリは曖昧に微笑んで首を振った。
「どうだろう。ごめんね、わからないや」仄暗い室内にざあざあと、木の葉の揺れる音が木霊した。
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