目覚め


最初に目が覚めたとき、彼女が見たものは白い天井だった。続いて、白いベッド、白い壁。

彼女は見覚えのない白に戸惑っていたが、部屋に入ってきた白衣の女性を見ると、ここがいつも自分がいる病院だということに気が付いた。女性はこの医院の婦長さんだ。

入ってきた婦長さんに彼女は話しかけた。目が覚める前のことを彼女はよく思い出せなかった。婦長さんは彼女に対し、彼女が事故にあったこととそれに伴う記憶の混濁を示唆した。彼女は少し考え、記憶の混濁を認めた。

次に婦長さんが部屋に来たとき、見知らぬ少女が隣に立っていた。睫毛に縁どられた赤い目にメッシュの入った黒髪。彼女は少女に名前を尋ねた。少女は口を薄く開き、妙にはっきりした発音で『アメリ』といった。彼女はアメリに『リカ』と応えた。それを聞いたアメリはほんの少し口を歪め、リカはそれをアメリが笑ったと解釈した。

婦長さんはアメリをリカに紹介し、二人のことについて話した。アメリとリカが魔法使いであること、二人は町に飛来する脅威を除く宿命にあること。婦長さんは、そのためにアメリに助けてもらいなさい、と言った。リカはアメリと組むことにも、『飛来する脅威』にも不思議と恐怖や戸惑いを感じなかった。

これからよろしくね、と言ったリカに、アメリはゆっくり頷いた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る