第26話 休息
話が急すぎたかもしれない。
言った後に後悔して、もう遅いということに妹の世界から閉め出されて気が付いた。
「やらかした。」
「…もうしょうがない。次にどう考えるかで、方向を考えよう。……今日は戻ろう。」
握っていた手を布団の中に戻して、俺はのろのろ立ち上がった。
父の口許は僅かに微笑みの形だ。
「よく気付いたな、部屋のこと。」
「うん。……この世界は詩絵里の好きなもので出来上がってるってことだろ。」
「……そうだな。」
「夢に住んでるって、気付くかな……。」
「……さあな………。」
父の一言は弱々しかった。
それはあらゆる感情がのし掛かってきて、押し潰されて吐き出した息のように苦しげでもあった。
父の後をついていくように部屋を出る。
気持ちを切り替えたい、と思った。
今日は合宿明けなので部活は休み。ぼんやり何をしようか考えながら、家にいない方がいいと思い至った。
ポケットからおもむろに携帯端末を取りだし、名前を眺めて暇そうな相手に連絡する。
こうして久しぶりに友達と遊びに出掛けた。
自分には焦りを押さえる必要がある。
どうもここ最近急いでばかりだ。
妹にも考える時間が必要だ。
あれは自分で答えにたどり着かないと意味がない。
教えて夢から覚めるとは思えなかった。
こうして数日、俺はあの部屋に行くのを控えた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます