第15話 知る歓び
雨がしとしと降っている。
雨はここから遥か遠い空で作られて、地上に落ち、太陽を浴びて姿を変えながらまた空へ昇る。
ソーマはいっぱい教えてくれた。
私にはこんなに知らないことがあったんだ。
ねえ、まだまだ知りたいことがあるの。
早くまた来てくれないかな。
私は窓の外を眺めながら、ソーマと一緒にお話ししたことを考えた。
物知りなソーマ。
としは16歳。好きな食べ物は私と同じハンバーグ。ちょっと日焼けしてて、運動が好きそう。手が骨っぽくて、私の手とは違う、男の人の手をしてる。
誕生日に会ったときはあんなに警戒していたのが、嘘みたいに今は大好き。
まるでずっと前から知り合いだったみたいに。
ソーマは私が家の外について聞く時、生き生きとした目を見せた。それが私には感じ取れて、余計に嬉しくさせた。
白と茶色の小さな鳥をよく見かけること。
公園にはピンクの花がいっぱい咲くこと。
遠くに見える山が今は雪で一面白くなっていること。
けど、春が来ると山が綺麗な緑色になること。
雨が上がると七色の虹が空にかかること。
青い海の表面が光を映してきらきら見えること。
それらの世界を、ソーマが私と一緒に見たがっていること。
私も見たい。
この目で、確かめたい。
「お母様!」
「……なあに?」
「私、お外に遊びに行きたい!」
「………そのうちね。」
ちょっと困った顔をして、そのうちね、と答えて、さあご飯にしましょう、と言って笑顔になった。
私はご飯のにおいに釣られて何も言わずに白い扉を開けて、テーブルに向かった。
素直に美味しそうとは言えなかった。
そのうちって、いつ?なんて聞けない。そういうオーラみたいなものを出していた。
今はにこにこしてご飯を食べる私を見ている。
そういえば……
お母様が一緒にご飯を食べるのを私は見たことがない。
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