第9話 欲求

今日は外を眺める時間が長かった。

小鳥が私に会いに来てくれたからだ。

シーナとは、少しお話しして、お絵描きをした。私達は双子だから、心が通っている。やっぱり同じ絵を描いた。


茶色と白の小鳥二羽と、灰色と白の小鳥一羽は、跳び跳ねるようにあちこちを歩き回り、忙しそうに首を動かした。可愛い。

小さな頭に先が尖った小さな足。嘴も小さくて、私の手の中に収まりそうだ、と思う。



触りたい。

もうこれで3回目。



小鳥に触りたいと思ったのは、今日が初めてではない。

じわじわと私の意識は触りたいという気持ちに支配され始めている。どうしても、触りたい。シーナも触ったことはないだろう。

でも、どうやったら触れるの。

今度は触る方法を考え始める。しかし、思い付く事はなかった。


「ねえ、お部屋の中に遊びに来てよ。」



小鳥は答えない。聞こえていないから、当たり前。私にも、小鳥の声は聞こえない。

落ちてくる水は、どんなにおいだろう。とても冷たいのかな。どこから落ちてきて、痛かったらどうしよう。

考えれば考えるほど、どれも一つとして実感出来ないことにイライラしてくる。

皆触れないのなら、しょうがない。でも、私がこんなにも触りたいと思っているのだから、他にも同じことを思う人はいるはずだ。



カチャ…


白い扉が開き、お母様が声をかけてくる。


「シェリ、ご飯よ。」


今日もいいにおいだ。お母様の作るご飯は美味しい。

フォークを刺すと肉汁が溢れるハンバーグは一番好き。

部屋の中のぬいぐるみ達は、きっとお母様が買ってきてくれたもの。手作りハンバーグを作る材料も、きっとお母様が買ってきている。それなら……。


「ねえ、私小鳥が欲しい。ぬいぐるみじゃなくて、外で飛んでいる小鳥!」


お母様はちょっと驚いた顔をして、困ったように微笑んだ。


「考えておくわね。」



私はすっかり『手にはいる』ものと勘違いし、喜んだ。

次の瞬間には、ご飯がハンバーグだといいなということしか考えていなかった。

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