第3話 双子

「ねっ!シーナ」


私が話しかけた後、うん、と首を縦に振ったのは、私とよく似た子。名前はシーナ。

シーナは生まれつき声が出ないんだって。

だから話しかけてくれることはない。

でも、きっと同じこと考えているの。感じてるの。だって私達、双子というものだから。

この間双子って言葉を教えてもらって、お母様のお腹の中からずっと一緒だったって知って、やっぱりねって思った。だっていつも同じタイミングに同じ感情を持つなんて、あり得ないもの。


同じ顔で笑い合って、同時に怒るの。同じ顔で。

双子って、楽しい。

シーナがいてくれるだけで、幸せ。


でも、お母様は私がシーナと一緒にご飯を食べさせないようにする。ううん、お母様のせいじゃない。お母様が悪い訳じゃないけれど、どうしていつも別々なの。シーナは何も言わない。静かにしている。


どうしようもないのは、もうずっと感じているの。

私にはどうすることも出来ないって。

だから言うの。


「早く食べ終わってまた話そう!」


この言葉を言うと、シーナははにかむ。

嬉しさをこらえきれなくて、ちょっと溢れてるような感じね。

早く食べ終わるために白い扉の向こうのテーブルを目指して早歩きする。走るとお母様に注意されるから、早歩き。

シーナはいつもどこでご飯を食べているのかな。

美味しいご飯だったら、私にも分けてほしいな。



私はシーナがいるから寂しくないの。

ねえ、シーナはどう?




にこりと小さく微笑んだ。

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