第50話 あいつらから学んだこともある
Mary Jane Side
俺は仲間たちと共に海から"G.O."の外へ向かった。そのまま目的地へまっしぐらの予定だ。俺たちも外へ出ても平気にはなったが、きっと限界はあるだろう。いずれは体に不調が現れる。それまでに目的を達しなければならない。俺たちは全員その覚悟は出来ている。
振り返って"G.O."を見る。僅かに見える明るさが何かで遮られていく。海上も封鎖するつもりだろう。その船団の一つにライトが当てられた。そこに一本の旗が立っている。
「誠」の一文字が書かれたものだ。
きっとあいつからの最後の挨拶だろう。俺は軽く手を振った。見えるわけがないが。
装備を外の世界にカスタマイズして体制を整える。俺も元は外の世界や鋼鉄派の人間だった。どうにかやってみせるさ。
その最中に携帯端末が鳴った。渡良瀬からだ。
<よう。聞こえるか?>
「ああ、聞いてる。あんたも無事だったんだんだな」
<どうにかな。街のみんなのおかげさ。今、実有を助けに向かってる。>
「……生きてるのか?」
<生きてるよ。ルドビコが今いる場所を教えてくれた。もうすぐ着く。>
「……そうか」
<お前は本当にこれでいいのか? お前の目的を遂げたとしても、彼女たちはもちろん、お前も幸せにはなれないぞ? その先のことは考えないのか?>
「俺はこうするしかないんだ。きっと、フーリッシュ・ハートも同じような気持ちでこの街に来たんだろう。実有が自らの意志でこの街を出ること。それこそがヴィトリオルの治療薬を作り出すことだと。彼女の近くにある、といった意味も含めてな」
<一つ聞きたい。ブラックバードはいるのか? お前の傍に>
「……ああ、いる」
<そうか。一つ聞いて欲しいことがある。
あの時、鋼鉄派が毒喰派に装甲車で攻撃を仕掛けようとした時の事だ。実有が飛び出した後、俺は対応を模索した。
その最中に突然、あるルートが導かれた。電子ネットワーク上の、と言うべきかな。
例のブルワ・ザン・インディゴにさ。俺はそいつの動向を探っていたが、まったくつかめなかった。あの頃はあいつもこの街には直接関われなかったから、何らかの中継を挟まなければならなかったんだろう。
だがあの時、それも含めて道が開けた。理由は様々だろうが、俺たちが考えていることは同じだろうな>
「……そうかもな」
<外側との『交流』お前に任せたのは失敗だったのか……それとも成功だったのか。もう、わからない。この街は今酷いもんだ。
だが、お前の『交流』の結果、この街も強くなった。今の状態はいくつかあったシナリオの内、最もマシなものかもしれない>
「何が言いたい?」
<つまり、お前は大した奴だって言いたいんだよ。いつのまにか外側にあった『本家』を乗っ取ってしまうとはな。
そのままボスの座についていれば楽隠居もできただろうに。
それに、スパイダーマンじゃなくて、コネチカットの方だろ、あの名前。
自分への罰か、それとも戒めのつまりか?
まあ、あれだ。死ぬなよ。それだけだ。じゃあな>
死ぬなよ、だと? これだけの事をされておきながら言うセリフか? まったく、あいつは……
懐にあったエア・ブレス・メタルを取り出す。俺はかつて、ほんの僅かな量を体に取り入れた。ただそれだけで俺の機械の体は変異した。徐々に生身の肉体へと。これだけの量があれば何が起こるかわからない。これでブローグ・ヒャータを生成すれば、呼び出す精霊は強力なものになるだろう。それできっと、扉は開く。それだけで力尽きたとしても、後に続く者は出るだろう。そして、奴等にはもう、扉を作り直すだけの力は無い。力をつける前に息の根を止めることが出来れば、俺の勝ちだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます