Tear Drop

桜雪

序章 Celestite

(あれが母さん…なぜ抱いてくれないの?)

(産まれてきてはいけないの?)


(あの子はいいな…家族に愛されて…幸せそうだね…良かったね)

(コレはなんだろう?…この世界の全て…ひとつも…触っちゃいけないの?)


(なぜ…抱いてくれなかったの?…無いことにされちゃったの…)

(なぜ?どうして!どうして!どおして!どうして!どうして!どをして!どうして!どうして!どうして!どうして!どおして!どうして!どうして!どうして!どうして!どをして!どうして!??……!…?どおして?…ど…うし…て)


(壊してやる…家族も…世界も…触れることができない全てを……………身体が欲しい…触れて壊せる身体が…ほシいィぃぃィぃぃ……)


 コトン!…コロコロコロ……。


「ん?」

「なに?」

「ん、石…綺麗なアメジストかな?」

「宝石が道に落ちてるわけないでしょ」

「そうよねー、でも綺麗…ほら、太陽に透かすと、世界が青紫に変わる」

「なに?詩人気取り?やめてよ」


 ―――その夜

(ねぇ…みんなは優しくしてくれる?)

「みんな…家族のこと?友達のこと?…うん…みんな優しいよ」

(へぇ~いいな~幸せなんだ)

「うん、幸せだよ…」

(そうか、じゃあ壊しに行こう)

「壊す?」

(そうだよ…幸せを壊しに行こう)

「う…ん…壊すの?」

(うん、壊すんだ)

「うん…こわすんだ!壊すんだ!こわすんだ!コワすんだ!殺すんだ!殺すんだ!頃澄ころすんだ!比棲ころすんだーーーー」

「あら奈美、どうしたの?包丁なんか持って……奈美?……ナニ?やめて!奈美!やめなさい!ぎゃあぁぁぁァァァ……ぁ…やめ……な…サぃ」

「憎いのよ…みんな、みんなんな、んな、んなァァァぁあァぁァアア?みんな死んで…身体を無くして…同じになろう!ひとつに…みんな独りに…」

「ひと~り」

 グサッ…ズブッ…ヌチャ~…

「ふた~り」

 ドスッ!ドスッ!ズブブブブッ…

「さんにん~」

 ザクッ!ブズっ!ズドッ!


「ははっ、ハハハ…あはッアハハAHAHAHAはぁ~」

「かぞう…えな~い……もう…数えない!みんな、みんな…アぁあぁぁァ」


「止めなさい!刃物を捨てて両手を挙げなさい!これは命令だ、従わない場合、即座に発砲します!」

「やめない!めない!めない!めない!めない!や~め~な~いぃぃぃィィイぃ」

「正気を失っている……やむを得ない…発砲!」


 本日深夜、惨殺事件発生。

 容疑者

 犯人は射殺。

 犠牲者8名…全員死亡。


 犯人の左手には紫水晶のような石が握られていたが、搬送途中に紛失。

                             以上 簡易報告。



 コトン!…コロコロコロ……。


「なにソレ?」

「綺麗な石だね」

「宝物にするんだ」


(ねぇ…幸せ?)


 Celestite…『和名で天青石、、角柱状の結晶が群生した非常に美しい形で産出される。石言葉は浄化』

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る