無題

彼女は、自分のことが嫌いだといった。



僕は好きだった。




黒い髪も、

白い肌も、

笑うと細くなる肌も。


目の下の2つのほくろや

いつも気にしている体重。



彼女はいつも

男に生まれたかったと言う。



仕事で寝不足な彼女はマスクをしてクマを隠している。


いや、仕事だけで寝不足なわけではない。

彼女は人気者だ。


とにかく人から好かれるので、

よく遊びに誘われている。


彼女自身、遊ぶのが好きみたいで。

寝ずに遊んだりしているようだ。


たまに、僕も、一緒に遊ぶことがある。

僕が呼ぶのではなく、僕の友達が呼ぶのだ。


ボーリング、ダーツ、ドライブ、カラオケ、

いろんなことをする。


彼女はタフだ。

いっさい疲れたとか眠いとか、そんな言葉は八差ない。

その代わりに、車に乗った瞬間に

死んだように眠る。


今もそう。

5人乗りの車。

運転席友達が二人と、後ろに僕と彼女。


紅茶のにおいがする。

彼女からだった。

車に乗った瞬間に僕にもたれかかるようにして眠る彼女。


ずっとこのままでいいのに、とか

思ってなくは、ない。


「七瀬、イズ寝てんの?」


「うん。」


「送るわ、もう朝だ、イズん家、お前の家と近いから、先にイズ送るわ」



なんで、彼女の家をっ知ってるんだろう、なんて思ったりした。

今運転してる僕の友達と、横で眠ってる彼女はとても仲がいい。

僕は、彼女とはそれつながりで知り合った。



「でもイズすごいよな、あの有名なブランドとコラボ商品するらしいよ。」


「!?」


「知らなかったの?まじですげえぇんだからこいつ。よく俺らと遊んでくれるよね。でも知ってた?お前いるっつったら、無理にでも来るんだよこいつ、お前にすごいなついてるよね。きづいてなかったっしょ?」


くくくと笑いながら、ハンドルをきる運転手と、

バックミラーで目が合った。

と同時に、僕にもたれかかってる、彼女の姿と僕が一緒に写って恥ずかしくなった。


彼女は、人に媚びたりしない性格ってことはみんなが知ってる。


だから、「なつく」という言い方は本当にあってる気がした。


彼女は人を好きにならない気がする。


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