6話-成長
なんでもないような話をしながら二人電車に揺られ
辿り着いた先は、見慣れた駅だった。
彼女が名東区から出てまで行きたい所が気になって仕方ないが、ひとまず彼女の案内に従って地下街を歩く。
名古屋の地下は歴史が深く、広い。
私はおいでよ名古屋になるにあたって、地下街の地図は当然暗記しているが
他府県からの旅行者にわかりやすいとは決して言えないくらいに地下は入り組んでいる。
それでも地下を歩くのは、単純に移動時間の短縮だ。
地下の全体図さえ覚えてしまえば、信号待ちも無く交通事故の心配もない地下街はまさに、インドア派の私には最適の移動手段なのだ…。
「…おいなごちゃん、何か考え事ですか…?」
「え、ごめん! 私何か言ってた!?」
「いえ…でも何か不思議と嬉しそうな顔でしたよ。」
「あ、それはメイちゃんとお出かけしてるからだよ!」
「えへへ…」
正直なところ、私は人生で初めてのお友達とのお出かけにはしゃいでいる部分もあった。
しかし同時に、彼女は私を友達として見てくれるのだろうか? という疑問も生まれ
「あぁ、人ってこうやってコミュ障になっていくんだ…」なんて切実に考えるきっかけにもなった。
しかし憂鬱になっても仕方がないのも事実で
ならば、今はこの時を楽しもう。
そう前向きになった頃、彼女は歩を止めた。
「おいなごちゃん…」
「ん。なにかな?」
何かを言おうとして、しかしすぐに言葉を詰まらせ
何やら恥ずかしそうにモジモジしはじめる彼女は
そうした想いに整理をつけるように一呼吸置いて言う。
「メイと一緒に…プリクラ撮ってほしいのですっ!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます