5話-芽吹き
彼女は、私が憧れる名古屋人の姿そのもので、私が憧れる人そのものだった。
喫茶店を出て、藤ヶ丘駅に戻る道中にも聞けば
地元愛が募った結果、私…おいでよ名古屋を見て
自分でも何かしたいと感じた結果、非公式萌えキャラになったのだそうだ。
「おいなごちゃん、この後どうしますか? 何か見たいものとか…ありますか?」
「あ、うん。 確か藤ヶ丘ってリニモがあるんだよね。」
「はい! 案内しますねっ」
藤ヶ丘駅の方に戻り、彼女の案内する方を見て私は驚愕した。
「あれ!?リニモって地下なの!?」
「あ、はい…。」
「さっき地下は地盤が固くて掘れないって…」
「リニモを通した時には技術的にも進歩していてですね…」
「あー、なるほどね…」
地下への階段を降り、リニモの改札口に辿り着く。
そして路線図を見てふと思う。
「…メイちゃん、もしかしてリニモって乗ると名古屋から出ちゃうの?」
「あ、はい…出ちゃいますね。」
「…わかった、リニモが見れて満足だよ…」
おいでよ名古屋 になってからというもの、名古屋の外には一切の興味を示せなくなった私には、リニモをこれ以上探求しようとは思えなかった。
リニモたん という可愛い萌えキャラがいることも勿論知っていたが、目の前にこんなに可愛らしい萌えキャラがいるのに、萌えキャラを見に行くなんて無粋な真似もすべきではないだろう。
「よし、じゃあ今度はメイちゃんの行きたい所に行こっか! お姉さんが何でも奢ってあげるよー!」
「え…じゃ、じゃあちょっと遠いですけどいいですか…?」
「もちろんだよー。」
そう言って地上に出て地下鉄に乗る。
高畑行きの電車が到着するのを待つ間、先に口を開いたのは彼女だった。
「…私、昔は地下鉄の端っこの駅は全部地上にあるものだと思っていたのです…。」
「かわいい…ずっとそのままでいてほしかった…」
「えっ…さすがに20歳になってそれは…」
…そんな話をしているうちに電車が到着し、程なくして目的地に向かって動き始めた。
東山線は今日も各駅停車でひた走る。
一話ずつ、確実に進んで行く物語のように。
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