7話-新しい街
プリクラ。
元々はアトラスのプリント倶楽部と呼ばれる機械の商品名の事で、現在では他社の別機種のことも総称してプリクラと呼ばれるようになり、1995年の登場から現在に至るまで、主に若い女性を中心に今も根強い人気を誇るリア充の常用武器である。
無論おいでよ名古屋になる前から友達などいなかった私は、使ったこともなければこれ以上の知識もない。
その私が、今日初めて会った同年代の女の子とプリクラ機の中にいる。
状況が整理できないままに、軽快な音声案内で進められる撮影に必死でついていく。
「おいなごちゃん…もう少し近くに来てください…!」
「え? あ、うん! え? 近くない??」
「ご、ごめんなさい調子に乗って…嫌でしたか…?」
「そんな!とんでもないよ!」
あたふたしながらも数枚の撮影を終え、ラクガキをしながらも写真を見比べる。
他の人のプリクラがどんなものかわからないが、なるほど楽しい。
「これなんか2人ともバッチリ撮れてるよね!」
「そうですね! 一緒に撮れてよかったのですっ」
写真機から出て、プリントされてきたシールを切り分ける。
私が生まれる前に誕生したプリクラも、この作業は未だに変わらないのはなぜだろう。とも思うが、笑顔でチョキチョキ切り分ける彼女を見て、きっとこの作業も含めての楽しさなんだ と感じた。
そしてふと気付く。
「あれ、これって携帯にデータ送れるの!?」
「あ、はい。 できるみたいですね。」
進歩のないやつだ と少しでも感じた事を若干後悔しながらも、説明に従ってデータを受け取る。
携帯の画面サイズで見ると、更に愛着が生まれた。
「メイちゃんかわいい…」
「え? 何か言いましたか…?」
「ううん、なんでもないよ。そろそろ行こっか。」
そうして駅に向かい歩き出す。
いつもは1人で歩くこの街の景色も、一緒に歩けば違う色に映って
初めての時よりも、初めての感覚で。
見慣れた新しい街を2人で歩み、いつもの駅にたどり着いた。
「どうしよっか。 お茶でもして帰る?」
彼女の異変に気付いたのは、そう提案した時の事だった。
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