2話-根付いた心
私がこの街に住み始めてから、一ヶ月が経った。
実家暮らしでこれといった趣味も持たずに仕事ばかりして生きてきた私は
貯金もそこそこにあり、すぐに職を探そうという気にもならず、毎日をただ浪費する日々を過ごしていた。
何にも縛られない日々。
新しい生活。新しい一歩。
何をしても楽しく感じる時期に、私は人生で初めて目的も持たずに外の世界を歩いてみた。
初めて見る知らない街は、やはり新鮮だった。
目に映る物全てが新しい発見で、感動に満ち溢れていた。
住む前は都会だと思っていたこの街、名古屋も
住んでみれば意外とそうでもなくて
何でもあれば、何にもない。
でもその事実一つ一つが妙に愛らしくて、知れば知るほどに好きになっていくのが自分でもわかって
「きっと私は、この街に来るために今までの毎日を過ごしてきたんだ。」
次第にそう感じるようになっていった。
実家から離れた馴染みのない土地でも、SNSで沢山の情報が入ってくる現代社会では
現実に友達がいない事実そのものも、正直苦にならない。
その代わりと言ってはなんだが、SNS上では名古屋の友人も増え、色々な事を教わった。
でもその中で気付いた事は、この街の人が名古屋について知らない事が多すぎる という事だった。
でもそれは、当たり前すぎて考えもしない事だったり
身近すぎて気付かない事が大半で
私も当たり前に過ごしてきた毎日に疑問を持たずに生きていれば、この街に出会う事もなかった。
この街の皆が、名古屋に来る前の私に似ている感じがして、なぜだか少し親近感が生まれて…顔も見えない相手だけれど
この街と、皆と、なんとなくうまくやっていけそうな気がした。
そして同時に、私がやりたい事を見つけられたような気がして
私は登録して間もないSNSのアカウントを作り直して、決意を新たにこう綴った。
「名古屋においでよ。」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます