第3話5-3
「あ、そうだ」
唐突に、エーファが徐にカバンを手に持ち何やら探し物をしている。その様子を4人は後ろから眺めて。
「何やってるの?」
ユラが話しかけると、エーファはひとつのリボンを付け梱包された紙袋を手にする。
「あった、あった」
「エーファ、それは?」
ヴァ—シャが紙袋を指さし、何か仕出かさないか目でエーファを追う。
「にひひ」
笑みを浮かべながら、ベッテルの元に歩み、
「ローマン・ベッテルさん」
「ローマンでいいよ。エーファ君」
「じゃ、ローマンさん、これを」
「これを私に?」
そう言いながら、紙袋を手にしようとするが、思いとどまり申し訳なさそうにその動きを止めてし合う。
今目の前にいるベッテルは、あくまでもデータから構築されたホログラムであり、実態がある訳ではなく、物に触れることは出来ない。
それを察した、エーファは深々と頭を下げ
「ごめんなさい。私・・・」
「謝る事ではないよ。わざわざ私のために持ってきてくれたんだろう」
「でも・・・」
自分の浅はかさで、ベッテルを気づつけてしまったといその場に立ち尽くしてしまう。そんなエーファにベッテルは、そっと自分の手を彼女の手に沿える。
温もりを感じるわけではないが、その行為に涙が凍れた。
「すまないが、中を見せてくれないか?」
「・・・はい」
涙を拭い、袋の中身を取り出す。
その中身は、何時も自分たちが人形劇に使う糸で編んだ、ヴァ—シャ、エーファ、コルネリア、ユミハ、そしてベッテルの人形が入っていた。
「これは・・・」
意外な贈り物に、ベッテルは驚きを隠せないでいる。
「いやぁ、流石に手ぶらで会いに行くのは、ちょっと・・・と思ってね」
4人も普段ろくに人形作りをしないエーファが、贈り物として人形を6体も作ってきた来た事に驚きを隠せないでいる。
「突貫でつくったものだから、あんまり良く出来なくって・・・」
言葉を言い終わる前に、コルネリアが飛びつき、
「すごいですよエーファ!。短時間でこれだけ出来れば上出来ですよ」
「え~、プログラムもユミハみたくは・・・」
「何言っているです。何時も怠けてばかりで自堕落な先輩が、これだけの事やったんですから良いんじゃないんですか」
「ええ~、其処は褒めてよ」
「褒めてますよ」
意地悪そうに笑みを浮かべ、、自分の人形を手にした。
「こういう事は、みんなに相談すればもっと簡単に出来たのに」
そういいながら、ヴァ—シャは嬉しそうに自分の人形を。
「この人形からは、作った人の温かみと優しさが溢れていますわ」
コルネリアは、自分の人形を手にして頬ずりをする。
「・・・」
「どうした?ユラ」
「あたしこんな顔じゃない」
不満顔をしながら、自分の人形を手にしてエーファに見せつける。
「嫌な、返せ」
「いやだ」
そう言って、人形を手に走り出す。
子供ぽいユラの行動に、呆れ返りながらも自分の人形と、ベッテルの人形は手にし、ベッテルに改めて人形を見せ、
「これが、私たちからの贈り物です」
彼女たちの様子に、目頭が熱くなりうれしさと、寂しさとの案とも複雑な表情しながら、
「ありがとう。こんな素敵な物を頂けるとは」
「喜んで頂けました?」
「ああ、本当に最高の贈り物だ」
彼女たちの笑顔は、ベッテルの記憶を走馬灯に映し出された。
—なぁ、お前たち・・・、何処で俺たちは間違えたんだろうな・・・—
彼の心のつぶやきは、はるか遠くの過去へ贖罪なのだろうか。データでしかない今のベッテルには、その答えを出す事は叶わない。
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