第25話4-6

 宇宙港の片隅に、旅客機とは別のターミナルがある。

其処には、プライベートで使用される個人所有の宇宙船が、発着の準備を行なっていた。

「へぇ、これがそうか」

 ターミナルの滑走路近くに出発の準備をしている1機の小型宇宙船の前で、ユラとエーファがその姿を見上げている。

「これ、少し前に出たモデルだよね」

 ユラが、宇宙船をぐるりと一周して期待の様子を確認しながら、製造プレートを見見ていると、コルネリアがすまなそうに2人に神戸をたれる。

「ごめんなさい。本当は、家の船を用意するつもりだだったんだけど…。お父様が使うと言うんで、知り合いに頼んで代わりを用意してもらったの」

 ため息をつき、もっと良い船を用意してくれたらよかったのにと、宇宙船を恨めしそうに眺めるコルネリアの姿に、ヴァーシャは気をつかう。

「別に気にしないで、コルネリア」

「そうですよ。先輩が船を手配してくれたから、節約できましたし」

「そうそう、他人に気を使わずにゆっくり出来るし」

 ユミハとエーファは、コルネリアに配慮して気を利かせてはいる。

一つ前の世代に販売された、プライベート宇宙船とは言え、機能や設備に関しては十分問題はない。

「所で、パイロットは何処かしら?。挨拶しないと」

 今回の航海の案内人でもあるパイロットに、挨拶しようと辺りを見渡すヴァーシャ

「…はい?」

「いや、だから、パイロット…」

「…いませんよ」

 コルネリアは小首をかしげて、さも当然のごとく不在である事を告げた。

「「「え!」」」

 その言葉に、一同は驚きながら、コルネリアに詰め寄り

「いませんて…」

「どう言う事です。先輩」

「おいおいおいおい、じゃ、誰がこれを操縦するのよ?」

「誰って…」

 特に鼻息の荒いエーファの様子に、狼狽えるながら指を指す方向には一人の影が。

「「もしかして…」」

 浮かび上がるその影は、次第に輪郭を帯てユラの姿を映し出す

エーファとヴァーシャは、一筋の悪寒が背中を走った。

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