第23話4-4
「お待たせ~」
イカ焼きを美味しそうにほおばりながら、荷物を抱えているユラ。
「ご苦労様…て、そんなのあったんだ」
ユラのイカ焼きを見て、エーファは物珍しそうに眺め。
「うん。半分こしたの」
「半分こ!」
ユラの言葉に、エーファ声を張り上げて、驚きを見せる。
これには、流石のヴァーシャでも、驚きを隠せないでいた。
貴重な天然物を半分とはいえ、手に入れたのだから無理も無い。
「誰と、折半したのよ!」
「あっちで、軍人さんに」
「軍人!」
軍人とはいえ、見ず知らずの人からイカ焼きを手に入れ、其れを当然のように頬張るユラに、呆れながらも興奮さめやぬヴァーシャとエーファ。
「はい先輩。どうぞ」
「あ、ありがとう…」
興奮している二人に、ユミハは袋籠から飲み物を手渡す。
喉を潤し、興奮を鎮めるヴァーシャ。
ジュースを手にし呆然としたエーファは、ハッとなり、釈然しないユラが手にしたイカ焼きを矛先に、思い出したように再び怒りがこみ上げて来て、憮然として頬を膨らませた。
「…ヴァーシャ先輩、エーファ先輩まだ不機嫌なですか?」
「そうなよ。ずっと調子で…」
ヒソヒソと内緒話をする2人は、エーファの様子を見ながら深いため息をつく。そんな様子を意に介さず、マイペースに食を貪るユラ。
「ねぇ、ヴァーシャ一口どう?」
嬉しそうにしながら、イカ焼きをヴァーシャに差し出す。醤油の香ばしい匂いが食欲を誘うのであった。
差し出されたイカ焼きに、手を差し伸べようとするとエーファが苛立ちを抑える為に、横からさらい平らげてしまう。
「あ~!、私のイカ焼き…」
「何、全部食べてんのよ!。もう、いい加減にしなさいよ!」
「そうだよエーファ。何も、私のイカ焼きに当たらないでよね」
まだ半分以上あったイカ焼きは、全てエーファの胃袋に収まってしまう。
自分も食べたかったイカ焼きをヴァーシに平らげられ、涙目になるユラ。
そんな不躾な態度に、ヴァーシャとユラの2人は、理不尽なエーファにじり寄る。
「わ、悪かった、悪かったよ」
流石に、2人ににじり寄られ態度を改めないとまずいと思う。
しかし、何を言って良いのか分からず、咄嗟の誤魔化しにユミハから手渡されたジュースを掲げて、
「あ、ユミハ悪いね、買出しに行かしちゃって。これ、ありがとう」
作り笑いしながら、ユミハの肩をたたいて御礼をする。
けれども、その様子に二つの視線は冷たい。
遠巻きに見ていたコルネリアが、一通り事が終わった事を確認して、端末を振りかざし4人に歩みを進める。
「お待たせ、手続き終わったわよ」
「お疲れ、コルネリア」
「お疲れさまです」
諸手続きを行ってくれたコルネリアの労をねぎらうヴァーシャと、飲み物を渡すユミハ。
「あ~、ありがとう。ハイこれ」
ユミハから飲み物を手渡され、お礼を言いながらみんなに、手続き完了した事を確認して貰う為、携帯端末か苦衷投影された書類を照らし出す。
「おっけい。サンキュ、コルネリア」
「やっぱり、こういう事は、コルネリアに任せると早いよね」
ユラが、感心しながら書類を確認すると、みんなの方を振り向く。
「ね、本当に行くの?」
「何、今更そんな事を」
もう直ぐ出発するという状況に、ユラの言葉にエーファは意外な感じで見る。
「もう、手続きも済んだんだから、行かないわけ無いでしょ」
「う、うん…。そうなんだけどね…」
「何が言いたいの?」
口ごもるユラの態度に、この先何かあるのかヴァーシャは気なった。
「あのね、前にも行ったけど”ベッティル””て言う人、結構変わっている人らしくって…」
「合ってくれるか、どうかと言う事?」
コルネアの言葉に、コクンと頷く。
「大丈夫ですよ。それ程有名な学者ではないんですから、エーヴェルハイトの時みたいに、閲覧禁止になる事はないとは思いますよ」
ユミハの言葉に、一同はうなずく。
「そうかな…」
自分の言葉に、自身が持てないユラに、不安を払拭させようと、ヴァーシャは隣に並ぶ。カメラを取り出し、ユラとの位置を調節し、自分と共にカメラを向ける。
「”案ずるよりも生むがやすし”て言うでしょ。心配しても、仕方ないし」
「そうそう。何もまだ始まっていなんだし」
そう言いながら、エーファはユラの肩に手をまわして、カメラに目線を合わす。
「ですわ」
コルネリアもユミハの手を取り、カメラ前に向かうが、その勢いに押されてしまい、ユミハはコルネリアに背中に寄りかかる感じでぶつかってしまう。
「あ…!」
その勢いは、ユミハ、コルネリア、ユラ、エーファとドミノ倒しに寄りかかる。
瞬間的に、避けようとするヴァーシャだが、エーファの身体が早く、ぶつかってしまい、その瞬間のタイミングでシャッターを押してしまう。
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