第21話4-2
「…う~ん」
腕組みしながら、真剣な表情をしながら、今此処で決断をしなければならない状況に、ユラは追い込まれていた。
「あの…お客様?」
「ごめん、もう少し考えさせて…」
「はぁ…」
苦笑しながら店員は、ショーケースのある物を一点に見つめているユラの姿に、困惑しながらも、ただ時が過ぎるのをため息を吐きながら、様子を伺っていた。
「イカ焼き…天然…」
この時代、自然にあるべき動植物は、乱獲と絶滅からの保護の観点から、捕獲、採取は研究や数の調整から一定量の捕獲を許可されており、それを収入の一部として販売される場合がある。
「後ひとつ…」
しかし、そういった天然物は、高級品で一般には卸されることは無いのだが、ごく稀に販売される事があるが、ユラの小遣いとイカ焼きを買うにはギリギリで、これを買ってしまったら、一ヶ月所か、これから向かう”惑星ボルディー”に降り立つには、非常に心許ない状況に追い込まれてしまう。
「でも…、此処で買わなかったら、一生後悔しそう…」
ブツブツと呟きながら、あれこれ巡らせ、意を決意したのか、真剣な眼差しで顔をあげると、
「あの…! イカや…」
「…イカ焼きひとつ、貰えるかな」
断腸の思いで、その一言を発しようとするよりも先、今まで気づかないでいた、隣の男性からその声は上げられた。
「はい、ありがとうございます」
店員からイカ焼きを受け取った青年は、服装からして軍に属してい身なりをし、背はユラよりも高い。
ただ体格と顔は、お世辞にも軍人としては聊か心ともない印象である。
「はい、ありがとう」
イカ焼きを手にし、焦げた醤油の香ばしい匂いが鼻腔を擽る。
其れを頬張ろうとすると、この世の終わりと絶望感に苛まされ、身を震わせなが目を潤ませながら、陰惨な視線を突きつける気配を感じ、青年はギョッとし一歩その場から退く。
「えっ…、ん…?」
今にも泣き出しそうなユラの姿に、自分が悪い事でもしたか、身の覚えの無い罪悪感に困惑した。
しかし、よく視線の先を確認すると、それは自分にではなく、手にしたイカ焼きに示す視線だと思い、
「…これ?」
青年はイカ焼きを指差すと、ユラはコクッと頷く。
「欲しかったの…?」
再び頷く。
「あ…」
ユラの切実な表情を見て、青年理解した。
恐らく彼女の予算では、このイカ焼きを買うという決断は断腸の思いだったんだろう。
それを自分が、先に買ってしまい、願いかなわない事に成ったしまった事に。
一瞬ではあるが、ssっ青年は思案を巡らせると、手にしたはイカ焼きをユラに差し出す。
「どうぞ、お嬢さん」
軍属とはいえ、消して安い買い物ではない物をただ自分の欲求の為に、簡単に手放す青年の行動に、流石にユラは首を横に振る。
「あ、ありがとうございます。でも、それはいけないことかと思います。な、何てゆうか…、幾ら食べたいからと言って、人のを羨んでそれを恵んでもらって…それは…善意の甘えになってしまいそうで…」
必死に、食べたいと言う欲求を抑え、自分が無償で恵んで貰う行為は、自分の道徳心に反する事を言葉足らずに発している。
そんなユラの姿に、青年は心穏やかに彼女なりの考えがあるのだと感心して、再びイカ焼きを差し出す。
「すまなかったね。君なりに色々と思っている事があったんだ」
「は、はい…」
「じゃ、こうしよう。このイカ焼きを半分ずつにするのは。で、半分の値段を渡してくれないか?」
青年の提案に、ユラは戸惑いながらも一応の納得を示し、
「それなら…」
「では、成立だね」
ニコやかに、半分のイカ焼きを手渡すと、ユラも笑みを浮かべた。
「ありがとうございます」
深々と一礼し、ユミハの方へ歩みを進みながら手を振ってお礼を伝える。
「先輩、何していたんですか?」
課買い物を済ませ、袋籠を手にして、ユラが来るのを待っていたユミハ。
「えへへ、買っちゃった」
「て、それ、天然のやつじゃないですか!」
「ムフフ」
「あ、ちょっとせんぱ…」
得意げにしているユラに、怪訝な表情で問い詰めようとすると、そのまま歩き出してしまい、慌てその後を追う。
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