第19話3-7

―惑星ブルクレン―


 秋も深まり、もう直ぐ冬が訪れようとする季節。

一台の少し蔵びれた感じのワゴン車には、運転席の男性と、その男性に助手席で何やら楽しそうに話しかけている女性の姿が映し出されていた。


 そのワゴン車には、後部差席に小道具や生活用品、人形が雑念と置かれ、ダッシュボードやサンバイザーには、旅先で公演を行った時に知り合った人達との映し出したフォトデータがあちらこちらに張られたいる。

学生時代に、奉仕活動と部活動の一環として何となく始めた人形劇。

人に扱われるのを由とせず、名目上の部長として気ままに活動を行おうとしていたが、部員である友人建ちにせっつかれながらも、人形劇を披露し学生時代を過ごしていた。

卒業と同時に、辞めるつもりではあったけど、大学に進学しても活動を続け、他の誰よりも人形劇に没頭し、ついには大学を中退し各惑星を巡り、子供たちに劇を見せ活動を行っていた。


 フォトデータの中に、数枚だけし色あせた珍しい写真が飾られたいた。

その写真には、5人の少女達が楽しそうな表情で笑っている姿が、幾つか映し出されている。

男性と談話していた女性は写真に目が触れると、フッと懐かしさを思い浮かべるように、儚い笑みがこぼれた。

それは、嘗て部長として人形劇研究部として活動をし、楽しかった一時を共有していた部員でもあり友人でもあった、今は戦争の中心にいる人物達のひとつの青春の記録でもある。

その様子に、男性はどうかしたのだろうかと思い声をかけると、その呼び答えに女性はハッとなり、話題を切り替えて再び談笑するのであった


暫く走っていると、スーパーの明かりを見つけ駐車場へと入り、2人は車から降りると、男性は買出しに、女性は休憩がてらあたりを散策する。

 スーパー以外、何も無い街道沿いを見渡しながら、裏手に歩いて回る。そこには、戦争の爪後を残す残骸が散乱し荒廃した世界が広がる。

遠くには、何隻かの宇宙船が墜落し、そのまま地面に突き刺さり戦争の悲惨な光景を残す。

憫然たるその風景に、憤りを感じながら空しさを実感し、誰かにこの気持ちをぶつける様に空を仰ぎ、輝く星の一点を見つめていた。


 男性が買い物が終わり、女性の方へ駆け寄ると、暖かいコーヒーを差し出して冷えた体を温めるように促す。

女性がそれを受け取ると、空から雪が舞い始め、それをさらって行くかの様に、一陣の風が吹き上げる。

 2人は寒さに身を震わすと、お互い寄り添い、体を温めながら車に乗り込み、再び公演の場所へ向かう為、戦争で荒れてしまった大地を走り始める。



これより5日後、”惑星ブルクレン”はこの銀河の片隅から、永遠に消え去るのであった。

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