第18話3-6
自室にスタンドの小さい明かりが、部屋をぼんやりと淡く映し出し、時折聞こえる虫の声が静かに緩やかなBGMとして流れていた。
ゆったりとした時間の流れに中、部屋の主は楽しむ事もなく机の上で、エーファはひたすらキーボードを叩き画面を見つめていた。
「う~ん、やっぱ、もう少し資料そろえてからの方が良かったかな…」
一息つき、体の張りを解す様に背伸びしながら画面の文章を確認する。
エーヴェルハルトに会いに行くに伴い、質問事項と彼の業績をまとめる文章を作成しているが、準備不足だった為か、いまひとつまとめきれないでいた。
考えをまとめる為、天井を仰ぎボーと眺めていると、携帯端末からメールが来た事を知らせる着信音が響く。
「なんだ、なんだ」
メールの送り主は、ユラからだった。
―やっほ~、元気してる?。良かったら、自分ありにエーヴェルハルトに関する資料、まとめてみたから良かったら使ってみてね―
―ユラだよ~―
「お、気がつくじゃん。流石、歴史好きのユラだ事」
ユラからの、資料を添付されたメールを眺めていると、今度はコルネリアからメールが送られて来た。
―コルネリアです。お疲れ様、資料作りがんばってますか?。一応、家にあった資料のいくつか送りますので、参考にでも。明日は、エーファの好きなイチゴ大福よ―
―コルネリアより―
「イチゴ大福か…。こりゃ、がんばらないと」
再び、資料作りに取り掛かろうとすると、三度メールが着信される。
「今度は誰だ…。て、ユミハか」
―先輩。お疲れ様です。私なりに資料を簡単ですが送りますので。それと、人形のデータ作ってますので、今度見てください―
―後輩のユミハ―
「ユミハまで、わざわざ…。て、事は…」
タイミングよくみんながみんな、エーファを気遣ってか、エーヴェルハイトの資料を送りつけてくるのに、ある種の作為が感じられ、暫く端末を眺めていると、案の定ヴァーシャからメールが送られて来た。
―資料届いた?。どうせ、資料作りがはかどらない様だろうと思って、みんなで資料送ろうと相談したのよ。余計な事かと思ったけど、これも人形劇を成功させる為とおもってね。頑張りなさいよ―
―ヴァーシャ―
「余計な事を…」
ヴァーシャの心遣いに、おせっかいな事と思いながらも、協力してくれるみんなのやさしさに思わず笑みがこぼれる
「ん?。あの野郎、一人だけ資料送っていないじゃん」
ヴァーシャのメールを確認すると、何処にも資料が添付されておらず、言いだしっぺの癖に自分は何もしないのかと、呆れながら腹立たしさを感じていたら、再びヴァーシャからメールが届いた。
―追伸。ごめん、資料送るの忘れてた。それと、さっき撮った写真も合わせて送ったからよろしく―
「何が、ごめんだよ。ったく、しっかりしてるんだか、抜けているんだか」
ユラ見たいなドジをかました事に、普段の言動からのギャップに思い出し笑いをしながら、送られて来た写真を眺めていた。
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