第15話3-3

 公園のベンチに腰を下ろす、ユミハ、コルネリア、ユラ。座る場所が無く、ベンチの隣で立っているヴァーシャにエーファが、焼きたてのクレープを幸せを噛み締めながら、法張っていた。

「うん、美味しい」

「こりゃ、当りだねコルネリア」

絶賛するヴァーシャとエーファに、満足げな表情を浮かべ、自分も食べ始める。

「良かった。気はなった痛んだけど、食べる機会が無かったから、どうなのかと思ったんだけど」

「そう言うのあるよね」

「そうなの、だから、この機会にみんなで一緒にと思ったのよ」

生地の暖かさと、果物と生クリームの冷たさのアンバランスな温度のコントラスト。機械ではない、人の手で作られた独特な美味しさを醸し出していた。

「手作りで、こんなに美味しく出来るものなんですね」

感心しながら、クレープを眺めながら夢中で食べているユミハ。

「そうね、今は調理器具が発達しているから、手作りなんて殆どやらなくなったけど、昔はこれが当たり前だったんのよね」

 まるで、人類の歴史の歩みを思い起こさせるような面持ちのヴァーシャに、ユラはすでに半分以上食べ終え、満面の笑みを浮かべて見上げる。


「あ、そうだ」

何か思い立ったのか、鞄から徐にカメラを取り出す。

「何してんの?」

何やら鞄からカメラを得意げに取り出したヴァーシャに、怪訝そうな顔をしてエーファは問いただす。

「記念よ、記念」

「「「「記念?」」」」

 4人が、不思議そうにヴァー社を見つめていると、それをお構いなしに、カメラを空中で固定させセッティングを始める。

「そう。だって、5人でこんな写真撮るなんて無かったじゃない、だから美味しいクレープの思い出と共にってね」

その言葉に、3人の関心と1人の無関心を決め込むのであった。

「良いですね、それ」

「面白いですわ。是非」

「うん。撮ろう撮ろう」

「どうでも良いんじゃない」

4人が、ベンチに腰掛ポーズを決めている姿に、呆れているエーファだった。

「じゃ、エーファは入らないのね」

「ちょ…、入らないて、言って無いじゃない」

 一人、仲間はずれにされるのが嫌だったのか、慌ててベンチの中央に割って入り、得意げなポーズを取る。何だかんだ言いながらも、自己主張だけは忘れないエーファに、一同は苦笑をし改めてポーズを取り始める

「じゃ、撮るわよ」

そういった後、リモートでシャッターを切り撮影を行い、満足げな表情で笑みをこぼし、再びクレープに集中するのであった。


「でも、これを一つ一つ一人で作っているなんて、大変なことしてるんですね」

感心しながらも、作業工程を物珍しく眺めていユミハは、その作業行程の大変さに苦労を感じた。

「確かに、大変かもしれないけど、其処には達成感と労働の喜びがあって、その苦労があるからこそ、美味しさが出来上がるんじゃない?」

 もっともらしい事をヴァーシャらしい言葉に、ユラが感心しながらクレープを穂張り美味しさを噛み締めている。

「だったら、お店の人に感謝しないとね。これなら、いくらでも食べられるよ。もう一個、食べたいな~」

「いやいや、それは違うぞユラ」

「え…?」


 得意げな顔をしながら、エーファはユラに向かってクレープを掲げた。

「いいか、美味しい物はたくさん食べれば、良い分けではない。あくまでも控え目に、その一口一口を噛み締め、口の中を美味しさで包み込みながら食べる。そして、最後の一口を食べる時の儚さと美味さを思いこして最後を飾る。けれど、満足はしたが、何か物足りなさが感じるが、それが次の食べたいと言う欲求に繋がるのよ。そうすれば、また次が食べたくなり幾らでも食べ商いでいるのよ。此処で、すべてを満たしてしまったら、どんなに美味しい物でも、食べる気がしなくなるからね」

身振り手振りと、大げさなリアクションをとりながら、持論を展開していくエーファに4人は、ただ唖然とするばかり。


一瞬、妙な間が空いた状況に、ユミハが感心するように驚く。

「へぇ…、エーファ先輩て、食にこだわりがあるのですね」

「かくも、食とは人の欲求なり…」

「何言っているの。ようするに美味しい物を何時までも食べたいから、程々にしておけば後に楽しみが増える問い事じゃない」

「まっ、そういう事」

 歯に着せないヴァーシャの言葉に、あっさり肯定するエーファに、一様は可笑しさを感じ自然と笑みがこぼれる。

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