第7話1-6
「エーヴェルハルトて、”ハンネス・エーヴェルハルト”の事?」
ユラの言葉に確認するかの様にコルネリアは訪ねた。
「そうそれ!、エーヴェルハルトよ、エーヴェルハルト」
喉の奥に刺さった刺が取れたかの様な、スッキリとした表情をするエーファに首をかしげた。
「確かに、エーヴェルハルトは誰もが知っている英雄だし…、まぁ、あんた知らなかったけど。でも…、人形劇にとしての演目として、向いているかしら?」
ヴァーシャの疑問に、ユラ、コルネリア、ユミハも同調し、晴れる事のないスッキリとしない胸の内をエーファは感じ取り、それを払拭させるかのように、笑みを浮かべながら、身振り手振りを交え力説し始める。
「ムフフ。だから良いのよ」
「「「「?」」」」
「ま、確かにヴァーシャの言う通り、題材に向いているかどうかという、疑問がおありでしょう。しかしエーヴェルハルトは、誰もが知るこの惑星の英雄。圧政と経済格差による富の独占、そんな抑圧された民衆の前に新星の如く現れ、人々に平等と権利を与え民族の開放を行った彼の偉業は国民だれもが知る事よ。それに、誰も知っていると言う事は、多少の脚色はご愛嬌として、余計な説明も省けるし、時間のない状況で脚本も書きやすい、エーヴェルハルトなら学校側にも受けは良いだろうし、だから子供にも優しい。うまくいけば、社会の論文のテーマにも使えるかも」
エーファの力説と情熱に圧倒される4人は、ただ呆然と時が暮れるのを待つばかりであった。
「まぁ、随分な物の言いようね。要するに…」
エーファの意図を読んでか、手段と方法を考えるには時間がなさすぎるという切迫した状況を理解し、賛同する他になさそうとヴァーシャは要約した。
「時間も評価も、深海の底で駄弁を貪っているのを如何に他人の尻馬に乗りサルベージして、自分たち成果に結び付けるかと言う分けね」
ヴァーシャの言葉に意味を理解したのか、コルネリアは身も蓋もない言葉で簡素化するのであった。
「”他人の褌で相撲を取る”と言う事ね」
コルネリアの言葉に、エーファは膝が折れそうになり、テーブルに寄りかかりながら苦笑する。
「それは…、ちょっと違うような…」
どうやら、ようやく演目が決まった様だと確信したユミハは、スクリーンパネルに筆を走らせる。
「じゃ、演目は”エーヴェルハルト英雄伝”で決まりですね」
勝手に命名された演目だが、このまま悠久の時の流れの中にで、延々と実りのない議論を繰り返すのかと思われた状況から打破出来た事は、有意義な事であったと一同は思う事とした。
「おお!英雄伝!。いいよユミハ、ずごくいいよ。これで、エーファも惰眠を貪れるね」
1人燥ぐユラの楽天的な姿に、一気に披露に見舞われて行く。
「惰眠て…、あんた人をなんだと思ってるのよ…」
怒る気力もなく、椅子を反対に腰掛け背もたれで腕枕をして、役目が終わったと感じ取る。
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