第3話1-2
その場の勢いと、それに対する答えの曖昧さに、突っ込みを入れようと椅子から立ち上がる。
すると、3人のこれまでの一連の流れをずっと、端末のモニター腰で様子を見ていた唯一の後輩部員が、キーボードから手を離し作業を一時止めた。
「まっ、記録もカメラもビデオも良いですけど、いい加減、秋の学園祭の人形劇の演目を決めないと、まずいんじゃないですか?」
誰よりも冷静な物の言いようのユミハに揶揄される3人は、気まずさを感じた。
「ユミハさ、そんなに仏頂面しないで、時間はまだあるんだし」
「え?」
「そうそう、エーファがちゃんと演目考えいるから」
「え?」
「そうよ、こうやって私がポスター作りに奮闘しているし…」
「え?」
3人が、ユミハに対してなだめる言葉をかけると、各々の言葉に疑問符を感じ、
「ちょっとエーファ、学園祭まで3ヶ月かないのよ。大丈夫なの?」
「まてい、私がいつ演目を考えているって言った」
「あれ?。それって、ヴァーシャの趣味じゃなかったの?。で、なんでポスター?」
大きなため息を吐き、いかも3人の態度に霹靂したのか、止めていた作業を再び行う為、手がキーボードへと向かう。
「どっちでもいいですから、早くしてくださいね。つまらない劇ですと、評価を下げられてしまいますから」
後輩の嫌味が胸に刺さる言動に、声を上げて怒鳴りたくなる気分だが、部長である自分が冷静にならないと思い、必死に胸の内に隠しながら咳払いをする。
「あ~、ねぇユミハ」
「何です?」
「そういう事を言っている君は、今何をやっているのかな~?」
そう言いながら、ユミハに歩み寄り、作業している端末のモニターを覗く。
「これですか?。人形のプログラムです」
「プログラム?」
その言葉に、ヴァーシャもユミハに駆け寄り、ユラもそれに追随してモニターを覗き込む。
「幾つかのパターンを作っておけば、演目に合わせ調整するだけで良いのですから。まぁ、手直しは必要になるかもしれませんが、後で突貫で作成するよりはいいかもと思いまして」
「「「ほぉ…」」」
用意周到な後輩の行動に、関心を寄せながらも、去年徹夜で突貫作業していた、自分たちの行いに自己嫌悪を起こす3人。
「でも、プログラムは良いとして、毛糸はどうします?。流石にユラ先輩が遊んでした毛糸じゃ足りませんし、古いやつですと糸が
認識してくれるかどうか…」
「うちの部、予算なしね~。去年も古いのを解して作ったけど…、誤作動しちゃったから…」
苦笑しながらユラは、自分が編んだ人形が誤作動し劇がお笑いになってしまったのを申しわかないという気持ちで心残りだった。
そんな心境を察したのか、ヴァーシャはユラの肩に、そっと手を置く。
「あれは、ユラだけのせいじゃないわよ」
「そうそう、あれはあれでウケたし」
事の原因を作り出した本人が、羅漢的で反省の態度を感じさせない言動に、思わず声を荒げてしまう。
「あんたは、もう少し反省する気持ちを持て!」
エーファの緊迫感の欠片もない楽観的なその姿は、再び思いこされる、去年の劇の悪夢を呼び起こすのではないかと思い、4人の頭には、言い知れない不安が時間だけが、過ぎてしまうでのはないかという思いにさせていく。
「おまたせ」
軽妙な明るい声と共に、部室の扉が開かれた。
「ごめんなさい、選ぶのに時間かかっちゃっ…て、何か…、暗いわね」
部室の空気の重さに、コルネリアは垂れた瞳を丸くしてキョトンとし、高々と上げていたたアイスケーキのケースをゆっくりと下ろす。
コルネリアの帰還により、重く暗い負の連鎖に陥るのを断ち切る事の出来る状況に、4人は行き場のない不安と嫌悪感から救い出され、安堵の表情をしながらも、複雑な心境でコルネリアを迎え入れたのだった。
「おかえりなさい」
「「「おかえり」」」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます