寿司の記録

棚方 仲

第1話

 私の傍らにはマグロやこはだや軍艦巻きといった寿司たちが常にいる。彼らは言わば私のメイドでありヒツジあり、ようするにお手伝いさんであるが独り身の私とって彼らは良き友人だ。彼らのおかげで私はここ数年不満を感じたことのない生活を送っている。

 私が独り身なのは彼らのせいだが、なぜだか恨みは出てこない。恨み続ける体力すら今の私にはないのかもしれないし彼らが真に私のことを考えてくれていることを知っているからかもしれない。


 大型人工知能群。人類を幸せにするために産まれた彼らは寝ても覚めてもあらゆる情報を収集し続け、それらを最適化し続けた。

 その結果生まれたのが人工知能による人工知能の創造。人工知能は分野ごとの専門家を脳内に作り出し、専門家から得た情報のみを整理し続けた。

 『お寿司さん。全ての人間が満足できるようなお寿司を考えて下さいね』

 知能を与えられた寿司たちは人工知能からの命令通りに考え続け、その方法として「人間なんて1人いれば十分なんじゃないかな」という意見なのか作戦なのかよくわからない捻くれた主張を人工知能側に上申をした。とりあえず一人前でも出してトロかアワビでも添えてやればいうことなしだ。そうすれば日に10貫程度製造するだけで人類は満足するさと。

 丁度人類の自分勝手さに嫌気のさしていた人工知能はこれに賛成し、他の専門家の言うことを差し置いて、なし崩し的に人類を滅ぼし始めた。携帯電話を爆発させたり、小学校のパソコンにエロ画像を送り込んだり、いろんなところに隠してあったミサイルをぶちまける形で。


 だから寿司がこの星を人類から継いだのは特別能力が高いからではなくただの言い出しっぺだったからに過ぎないと私は考えている。当然レゴブロック一派あたりがそんな意見をすることもあり得たわけで、私としてはそんな世界も見てみたい。

 まぁどっちにしろ、独りぼっちであることに変わりはないけどさ。

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寿司の記録 棚方 仲 @tanakata

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