第7話

結論、見失った。


地元民恐るべし。


「ぜぇ…ぜぇ…あの人、見た目の歳よりも…明らかに若いぞ…少なくとも10キロ以上をノンストップで走っていった…」


方向は間違っていないはず、あれほど急いでいるのなら川や急斜面がない限り迂回することはありえない。


「やっぱり人は見た目じゃないな…なんとかして追いつかねば」


昨日出会った少女は今頃どうしているだろうか。


あの時の様子では無残に散るということは考えづらい。むしろ強かった。


「と、とりあえずこのまま進むか。なにもなければきっと村にたどり着くはず」


頭をからっぽにして走って来たため、現在地がわからない。戻るにしても戻れる自信はなかった。


時刻はおそらく地球で言う、午後に切り替わる寸前くらいだろう。太陽が浩人の真上にある。


「てかあれって本当に太陽なのか…?もしかしたら別の何かかもしれないな。まぁ知らないけど」


疲れているはずなのに何故か考え事をしてしまう。おそらく現実逃避の一種なのだろう。


「朝霧で濡れた道もすっかり乾いたな。それだけ時間が経ったということなんだろうけど」


起きてからおそらく4時間は経過している。天気は快晴で、気温も割と高めなので地面が乾くのにそれほどかからなかった。



「どうっすかなぁ。一応リュックは持ってきたけど、走ってる途中でひっかけてボロボロになった…」


もはやリュックとしての機能があるかも定かではないが、一応数少ない初期装備なので捨てられずにいた。ちなみにろうそくはボッキボキ折れている。


「ぼっきぼっきにしーてやんよー!」


頭がお花畑にフライアウェイ。


「現実逃避ってたのしーなー!あはははは!疲れたよパトラッシュ!早く来ておねがい!」


もういっそのこと楽になりたい。そう浩人は思った。


そんな時、遠くから声が聞こえた。


「いたぞ!見つけた!こっちだ!」


声がした方向は現在進んでいる先のほうだ。


「見つけた?なにを?…まさか」


ドドドドド!!


「今度は追いかけっこかよぉぉぉぉぉ!」


もはや恒例である。


「まて!逃げるな!」


「逃げるなって言われて止まるバカはいませーん!」


浩人は残り少ない体力で全力疾走した。限界だと思ったその先にも体力は案外残っているものだ。


「まってください勇者様!」


「勇者?」


浩人は止まった。


「勇者って俺の事?」


「そうです!勇者様!」


追ってきた数人の男はそう、浩人に答えた。


「なんで、俺が勇者?」


「それはあなたが私たちの村を救ってくださったからです!」


「村?救った?まだ行ったこともないのに…」


「とにかく!村へお越しください!」


「お、おう」


いきなりの展開でほとんど理解していない浩人だが、勇者と呼ばれてテンションが上がった為、細かいところは気にしなかった。

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