第3話

「まじかぁ…このタイミングでこれはまずいぞ」


人に会えたことに安堵はしたが、展開が良くなるとは誰も言ってはいない。


「お兄さんは…お兄さんも迷子?」


「お兄さんも迷子…しかも住所不定無職…」


希望の光が絶えてしまったため、その場に膝をつく。


時は夜。持ち物はリュックとろうそく。目の前には現在地がわからない一人の少女。


少女?


「そうか!せめてここがどんな場所か教えてもらえれば!」


ここがもし地球のどこかなら、少なからず希望は存在する。魔法のような特殊設定もないし、自分の知っている物理法則が捻じ曲げられているということはありえない。


「教えてほしいことがあるんだけど…地球ってしってる?」


「ん…なにそれ。食べ物?」


終わった。希望はない。


「そうか…ここはやはり異世界なのか…」


「いせかい?この場所いせかいって場所なの?」


「そういうことじゃないんだよ…」


説明する気力もなかった。


「どうすっかなぁ…パーティメンバー増えたのはいいけど現在地もわからず持ち物もわからない、かぁ」


途方に暮れてしまった。一度腰を下ろしてしまったので再び立たなければならないのだが、そのような気力もない。


「お兄さん、疲れてるの?」


「あぁ、そうだよ。お兄さんは行く当てもなく食べるものもなく、これからの予定もないただの有機物さ…」


「ゆーきぶつ?よくわからないけど…お兄さんおなか空いてるんだね?待ってて!」


少女はいきなり走り出した。


「ちょっ、危ないよ!暗いんだから走ったら転ぶよ!」


浩人の制止も聞かず、少女は走ってどこかへ行った。


「あれ…一人だ、な。女の子1人いるだけでも意外と安心してたのか…どうしよ、無性に死にたくなってきた。」


絶望に襲われ、自暴自棄になっている本作の主人公。


「この物語はここまで!特に面白いこともなく終わりです!ありがとうございま


ドォォォォォォオン!!!!


「うわぁぁぁ!?なんだなんだ!?」


突然の爆発音。そして木々を激しく揺らす程度の暴風。


状況が読み込めない上、自分を守るので精一杯だった。


「くっそ…せっかく終わらせようとしてたのに!」


怒るポイントが圧倒的に違った。


「にしても、なんの爆発なんだ?もしかしてやばい状況なんじゃ…」


突然の爆発。以前浩人がいた世界でこの程度の爆発が起こるとしたらなにかの化学反応か爆発くらいだろう。しかしこの世界は浩人が知らない世界なのだ。予想もつかなかった。


すると、爆発した方向から少女が走って帰ってきた。


「大丈夫だったのか!…よかった。もしかしたら巻き込まれたのかと思った」


「ん?なにかあったの?私はただ走って帰ってきただけなんだけど」


「何もなかったって…さっき爆発あっただろ?あれがわからないわけないよな…?」


「爆発…あっ、あー!あったね!すごかったね!あははは」


少女は思い出したように笑った。


「にしても、どこに行ってきたの?それになにかひきずって…!?」


少女は縄で何かを引きずってきていた。


「それって…まさか…」


とてもとても大きな生き物。少女の何十倍もあるその生き物はきっとほとんどの人がその名前を知っているだろう。


「ん?ドラゴンだよ?」

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